第17話 ネオン街のダーティハリー
ドストエフスキーってロシアの文豪いますよね。
それで、ロシアの小説って私にはただ長くて読むのが大変っていうイメージしかありませんでした。ところが今年はドストエフスキー生誕200年ということで、本屋さんに行くと沢山並んでいました。それで。高校生時代の先生のことを思い出しました。
その先生は女の子に人気があって、淳ちゃんって呼ばれてました。
それで、その淳ちゃんが授業の時にドストエフスキーの話をしました。
それで、淳ちゃんのことが大好きだった私は、罪と罰を買いました。
ただ、「私は読んでますって」見せるためだけでした。でもやっぱり最後まで読むのがむずかしくて、いつになったら読み終えるのか自分でもわからなくなっていました。
それでも私と同じ考えでドストエフスキーを買って、完全に読破した子が3人もいました。
それで、その子たちと淳ちゃんが文学の話で盛り上がってるのが悔しくて、何か別の方法はないかっていろいろな考えてたんだけど、結局うまい方法なんてあるわけがないわよね。
それから何日もたってそんなこと忘れていたんだけど、淳ちゃんがまた5~6人の女の子に囲まれて話してたんだけど、その中に私もいました。
で、何かのきっかけで淳ちゃんがが私に「お前はいい嫁さんになるぞ」っていいました。
女の子ってね高校生のころが一番結婚に憧れるものなのね。
だから、本当にうれしかった。そのとき淳ちゃんが「今は全部読まなくても思い出したら読めばいい、それまではツンドクでいい」って積読のことね。しゃれもうまかった。また読んでみようかな。
それで、淳ちゃんは特に夏に多いんだけど、登校の途中でアスファルトの道路に土のあるところまで戻れなくなったミミズがいっぱいいて、日が昇ってアスファルトが熱くなると干乾しになって死んでしまうのね。かわいそうに思った淳ちゃんはミミズを発見したらすぐに、道端の草の茎を2本使ってミミズを土のあるところまで帰してあげました。
そして、水をかけてあげるの。それを見ていた近所に住む主婦の皆さんもやるようになりました、それからはその道だけはミミズの干乾しがなくなりました。
淳ちゃんの優しさはミミズにまで向けられてました。
今は淳ちゃんどうしてるのかな。
淳ちゃんにはきっと、ミミズの恩返しがあると思います。
今日も素敵ななお客さんに出会いました。お客さんの名前はハリーさんと言います。でも日本人ですよ。
他の女の子の中にはハリーさんのこと知ってる子がいました。
だから、この店はじめてではないのね、でも私は何も知らないから名刺を差し上げました。するとハリーがさんは私の名刺を左手に持ち、右手で夕陽のガンマンがやるように銃をくるくるっと回してドンと撃ちました。そして私の名刺にこそっとボールペンで穴をあけて私に見せて「お前の悪事も今日で終わった。苦労を掛けやがって」と、映画のセリフをいうようにつぶやきました。
私は自分が撃たれたとしたらよくあるでしょ、ばたっと倒れてピクピクって痙攣させて死ぬパターン。あれならお芝居のお相手もできると思うんだけど、撃たれたのは私の名刺だからリアクションに困りました。
ハリーさんは「おれが射抜いたのはおまえのハートだ、おれはおまえの中に潜む悪を殺したんだ」って、
その人は「おれはネオン街のダーティハリーだ」って言いました。
ほんと、こんな人が実際にいてほしいと思いました。ハリーさんを私は知らなかったけどこの街では人気者で、ハリーさんが来た店は繫盛するって評判でした。
席についた私もなにかいいことがあるかも知れない。
ハリーさんが持って帰った、穴の空いた私の名刺をずーっと持っていてほしい。
それでね、ハリーさんにもう一枚名刺に穴をあけてもらいました。
私を守ってくれるダーティハリーをいつも、身につけていたいから。
それで「私が仕事を依頼する時はこれでいいの」ってお金を出すポーズを見せたら
「おまえ、それは仕置人だ」って。仕事をお願いするひと間違っちゃったのね。
でも、どっちでもいいからこんな人がほしいと思いませんか。
でも、あなたが私のダーティハリーなんです。
私を守ってくれる人。ダーティでも心はきれいなハリーさん。
それじゃあ、今夜もおやすみなさい。
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