第13話 神さまはどこ

 今朝、山梨県で大きな地震がありましたね。皆さまの街は大丈夫ですか。とても心配です。 私のことは心配しないで下さいね。珠理はいつも通り元気ですから。

 

 今日から十二月になりました。十二月は師走っていうんですね。

 じゃあ、十月はなんていうかご存知ですよね。そう神無月「かんなずき」です。

 

 私の本当の名前はカンナといいます。(漢字で書くのですが字は秘密です)

十月生まれだからカンナになりました。理由はかんたんだったんです。

 神無でなくてよかったと思います。神無ってちょっと怖い感じがするし、神さまがいないんですから。

 小さかったころ、どうして十月は神さまがいない月なのか、ふしぎに思い、その訳を母に聞きました。すると母は「十月は全国の神さまが伊勢神宮に集まって会議をするのよ。だから地元には神さまがいなくなってしまう月なのよ」


 そして「なにか悪いことが起きても、助けてくれる神さまがいないのだから、お前も悪いことをしてはだめなのよ」と言われました。

 でも私は悪いこといっぱいしてきたなって、少し反省しています。

 「許してください。神さま」


 今日、母にプレゼントと思い、ベルーナっていう通販会社からある品を送りました。

 それはヘアーピースセス。そう部分カツラです。

 母は最近白毛が増えて、染めているんだけど、伸びてきたところだけ白くて変なのね。特に分け目は目立つからって。

 それで、分け目をかくすため、ヘアーピースっていう便利なものがある訳なのね。

 明日、着くと思うけど、喜んでくれるかな。


 毎日、お客さんにいろいろなこと教えてもらいますけど、今日もそうでした。

 私、なにげなく使っていた言葉にほんとうは、いってはいけないことばがあるんだってことを。 

 たくさん教えてもらいましたけど、今日はひとつだけ。

 

 それは、「みんな、言っている」です。

 みんなって、誰と誰?


 ほんとうは、自分一人のことなのにまるで、大勢の意見であるかのようにいうってことよね。自分だけが正しいって思ってる人がよく使う言葉だって、

 誰かをまきこんで。まきこまれた人は迷惑よね。

 この言葉は、神さまや仏さまに仕える仕事のひとは、絶対に使わないそうよ。


「自分の考えを他人に伝えたいときは、自分ひとりの責任で語りなさい」

 あー、重みのあることば。


 私はもう言いません「みんな、言っている」


 これを今日、教えてくれたのは、いつも下ネタばっかり言ってるお客さんです。

 どうしちゃったのかなと思っていたんだけど、本当はこんなことまで考えながら話してたなんて、知らなかった。


 下ネタもありがたく感じてきました。

 これからも下ネタをいっぱい教えて下さい。どうぞよろしくお願いいたします。


 今日最後のお客さんは今は独身です。三年前に奥さんを亡くしたんだって。

 今日はじめてそのことを知りました。

 今まで寂しそうな顔をみせたことがないので、考えてもいませんでした。


 そのお客さんはうちのお店にあるメニューの中から、焼うどんを注文しました。

 他にもたくさん料理はあるのよ、カレー以外は。(カレーライスがキャバクラのメニューに無い理由はいずれ話します)

 それで、このお客さんがよく料理を作ってたんだって。その中でも焼うどんが奥さんに好評で「良一の作る焼うどんは世界で一番」って。

 それで、うちのお店の焼うどんを食べたお客さん「うまい、これに比べたらおれの作ったのは只のエサだった。それなのに『おいしい』っていってくれたんだな……」

と、少し寂しげでした。


 私も涙がでそうになりました。

 でもそのお客さん、そのあとはいつものように明るく、私を楽しませてくれました。

 そう、私が楽しませてもらっていました。立場、逆よね。

 今日は反省と教訓の一日でした。


 今日の私、いつもと違うって? 大丈夫です。熱はありません。

 それじゃあ、今夜もおやすみなさい。

















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