第6話 始めての両方向光通信
季節は春、みな公平にその恩恵にあずかる。俊介は中学生になった。スマホを手に入れて新しいLINE友だちができるのを楽しみにしていた。
俊介は小学生時代に友だちと呼べる子は、男の子も女の子も含め一人もいなかった。
両親に勉強をしている姿を見せていれば喜んでくれる。だから家にこもっていた。
本当は勉強などしていなかったのだが、今はこもっている理由もない。
だが同じクラスになった子供たちの中に友達になれそうな子はいなかった。
冴子のショーを毎日見ている俊介には、周りの子どもたちが皆、幼く感じた。
同じ中学校に杏里がいた。杏里は三年生になっていた。体はより女らしくなり、胸も大きくなったように感じる。化粧も上手になって年齢より上に見えた。
彼女たちのグループの学校内での評判は俊介にも分かった。
同じ学校内のことである、廊下ですれ違うことが数回あった。
二回目に会ったとき、声をかけたくて仕方がなかったのだができなかった。
ズボンの中が膨張して痛かった。この点は変わっていない。こんど会った時は絶対に声を掛けようと俊介はその時の言葉を考えていた。
そのチャンスが訪れた。今日はグループではなく杏里一人であった。
俊介は思い切って声をだした「すみません、ラ,ラライン……ラインを」
杏里にはすぐに分かった。「ライン友達になりたいの?」
隼人の時もそうだった。彼は上級生だったからもっとストレートに言ったが。
「おれと付き合ってくれ」その隼人は卒業して今は高校生になっている。
杏里は一年前の今ごろを思い出した。あの時はその日のうちに彼の部屋でセックスをした。ふたりとも初めての体験だった。
わずか一年前のことだ。懐かしいというほど昔の事ではない。
隼人は高校生になって部活を始めた。帰りが遅い。彼が学校から帰るころには彼の母親がいる。二人だけで逢える場所がなくなっていた。
「ライン、いいわよ」QRコードで二人はライン友達になった。
「シュンスケと呼ぶわよ、シュンスケの家どこ?」
隼人と同じマンションである。杏里は偶然に驚きながらも嬉しかった。
あのマンションは私のパワースポットだと。
杏里からLINEがあった。「今から行く」「待ってる」
杏里がやってきた。隼人の部屋と同じ造りである。杏里には勝手知ったる我が家のように感じた。左右逆であるが
キスの難しさは想像を超えていた。杏里の指示は「次はここ」胸を指さした。
指示に従いなめてみた。
これでいいらしい。口とここは同じやり方でいいのだと勉強した。
さて次はどうする。この姿勢をいつまで続ければいいのか俊介は考える。
杏里が俊介の顔を両手で柔らかく誘導する。再びキスとなる。
杏里が起き上がった。次は何が始まるのか。杏里は避妊具をとりだした。
装着は更に難しい。「あとで読んで」説明書が必要なもののようであった。
ここは杏里にすべてお願いした。間違えたら後が恐いものだから、ここは杏里に任す方がいい。ここまでは俊介の頭の中は正常に機能している。
杏里が缶ジュースを用意していた。こんなうまい飲み物が世の中にあったのかと思うほどであった。飲み慣れた缶ジュースであったが。
また一連の作業が始まる。こんどは杏里に任せてばかりではいられない。
俊介は復習した。今度は指導を受けずに終了までできた。
杏里も満足したに違いない。杏里のあの声が物語っている。
もうすぐ母が帰ってくる。二人のショーは終わった。
次のショーは冴子の部屋で始まる。冴子のショーもいつもに増して激しく艶やかに終わった。
冴子の窓の明かりが消える。俊介の窓の明かりが点く。
「今夜もみてくれた?」「ボクも見せたかった」
今日の光通信は両方向通信であった。
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