モブとはなんたるか その3
僕、佐藤 清はモブである。
これまでの短い人生であっても、2番手・3番手、或いはその他大勢を好んで歩んできた。
むしろ、この生き方に流儀さえ見出している。
人を支え・助け・目立たさせるというのは、自分が主人公であること以上に楽しく、嬉しいことだ。
だから主人公は僕じゃない。僕である必要はない。
負け惜しみではない。事実自分には補佐役が向いているのだ。
名俳優の傍には名脇役がいるように、陰ながら味のある人生。それが性に合っているし、目指すべきところなのだと齢12歳で実感したのだ。
登校を終え、机でくつろいでいると男が一人近づいてきた。
「おはよう。話聞いたぞ。お前みたいな
「あるわけないだろ。僕がああいう人たちと関わるのが苦手なのは知ってるだろ」
朝一番、無礼千万な挨拶をかましてきた人物が鈴木
友人、といえば聞こえはいいが、切りたくても切れない、なんだかんだで関わりがある腐れ縁という奴なんだと思う。
こんな奴でも憂鬱な今日みたいな日にはいるだけ気が紛れるというものだ。
今日――――3月24日。『成績表は手渡しで』なんていう校長の学校素行アピールにかこつけた切手代と事務処理の人件費削減の為だけに設けられた、中間登校日という名の無意味な一日。
正確には午前中いっぱいだが、健康的な高校生、それも部活にも属さないフリーの学生にしてみれば貴重な睡眠時間を削らているのだから、一日無駄にするも同義である。
せめて駄弁って時間をつぶさなければやってられない。
「ですよねー。そこは信じて疑ってませんでした。君は目立たないし目立てない。平穏を愛する由緒正しき陰キャラよ」
「おほめにあずかり光栄だ。
「誰が似非じゃ。クラスカーストの半分よりは上じゃ」
「知ってるか? 本物の陽キャはクラスカーストという概念を知らないんだぞ」
「んなわきゃないやろ」
「坂上が知らなかったぞ」
「私めは最底辺の陰キャでございます」
坂上――――坂上
読んで字の如く、太陽のように熱く・明るく・そして何よりテンションが高い。
きっとラテン系の国でサボテンの上に咲いた花から両手にマラカスをもって誕生したに違いない。
こんな訳の分からないことを
この2年3組における最上位カーストに君臨する男である。
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