エピローグ

第67話 エピローグ1

 ——エピローグ——



 それから、数年の月日が流れた。


 蓮根はすねれんは高校を卒業し、卒業後は宇宙警察学校に入学、そして宇宙パトロール隊員になった。


 宇宙パトロールでは交通課に所属している蓮は、宇宙船の交通違反を取り締まるのが日課だ。


 レンは今日も小型宇宙船で第三地球サードアース宙域管区をパトロール中だった。

 

「レン、もうすぐ結婚記念日よね?奥様には何かプレゼントするの?」


 レンの乗る小型宇宙線のナビ画面から、女性の声が聞こえてくる。


「うん、考えてるよ……決まってないけどね」


「奥様は欲しい物あるのかな?」


「うん、ミオはVRで使う新しい銃がいいって言ってたな……」


「ああ、ミオらしいわね……」


 小型宇宙船のナビから聞こえてくるのは、ステラの声だった。


「それなら、あたしが最強のやつ作ってあげようか?」


 宇宙船のパネルに映し出された、デフォルメされたステラの姿をしたナビキャラが言った。

 

「ステラさん、チートはダメですよ。言ったでしょ」


「えー、わかったわよ」



 レンは宇宙パトロール隊員になった後、同じく宇宙パトロール隊員となった白壁しらかべみおと結婚した。



 福羽ふくば古都華ことか——コト——は卒業後、第三トキオ大学に進学、卒業後は古都華ことかの母、小春こはるが社長を勤めるVR開発会社、Epice &Co.エピスアンドコーに就職した。


 高麗こうらいじん——ライ——もまた、古都華ことかと同じく第三トキオ大学に進学し、第三地域サードアース宇宙公務員採用総合職試験に合格、現在は宇宙政府の官僚になり、今は忙しく星々を行き来している。


 

 紅林くればやし小夏こなつ——フラン——は、大会で注目を浴び、プロのフルダイブeゲームプレイヤーとなった。

 フランは現在もトッププレイヤーとしてフルダイブゲームの世界で活躍している。



 紅林くればやしまどか——ぽろたん——は、新しくVRMMO内に新設されたヴァシュラン大学の初年度入学生として入学、その後大学院に進み、卒業後はドラゴン研究学者となりティーポット王国の王宮で働く事になった。


 現在はEpice &Co.エピスアンドコーと共同研究契約を結び、ティーポット王国のドラゴン研究知識をEpice &Co.エピスアンドコーがエピスシステムにフィードバックする実験の手伝いも行っていた。



 ステラはバトルロイヤル後、一気に有名になり、世界中にその存在を知られる事となった。


 そして運営によって、ザラートワールドには出禁になった。


 だが、今でもたまにこっそりと、姿を変えてザラートワールドに忍び込んでいる……という噂である。


「あの大会の後、チートにめっちゃ厳しくなりましたよ……ステラさんが思いっきりやってくれちゃったから」


「いいじゃない、みんなも楽しかったでしょ?」

 ナビキャラと化したステラは楽しそうに言う。


「ま、たしかに盛り上がってはいたけどね……」

 蓮は苦笑している。


 

 ザラートワールド内では出禁扱いとなっているステラであったが、本体のプログラムは今や第三地球サードアースのインフラ維持に欠かせない最強のAIとなっている。


 Epice &Co.エピスアンドコーの開発したステラを元に開発されたAIシステムは、世界中のコンピュータに搭載され、今やゲームだけでなく、銀行のメインバンクからコンビニのレジ、車のナビなどありとあらゆる場所で使われている。


 レンの乗る宇宙パトロールの宇宙船にもステラは搭載されていて、ナビの役割を果たしているのだ。



 宇宙パトロールは本来なら二人一組で行動しなくては行けないのだが、ステラプログラムを搭載してからは近隣の宇宙交通パトロールくらいなら一人でパトロール船を出しても良いという決まりに変更された。

 速度違反をしている宇宙船には、ステラがハッキングを仕掛けて行動不能に出来るので、ステラだけでも交通違反の取り締まりが出来てしまうのだ。


「レン、そろそろ宇宙ステーションに戻る時間よ。戻ったら勤務時間は終わり、非番だね。」

 ナビのステラが言う。


「ああ、もうこんな時間だったんだ……」


 レンは腕時計の文字板を確認した。

 時刻はもうすぐ夜の十時になろうとしていた。

 宇宙ステーション署に戻って次の隊員と交代すれば、二十四時間の非番となる予定だった。


「ミオさんによろしくね、良い休日を」


「まだ早いよ、ちゃんと署に戻るまで仕事だからね」

 レンは笑いながら言う。


 ……その時だった。


「あれ、レンに宇宙電話が掛かってきたよ……珍しい相手から」


 ナビのステラが言った。


「珍しい相手?」

 レンは聞き返す。


「うん。福羽ふくば小春こはる博士」


 なんだろう……レンは首を傾げた。

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