第63話 決勝戦・10

覇王の光の雨ロードレインフォール!」


 ステラが特級魔法を発動させる。


 上空に大量の光の槍が出現し、雨の様に降り注いだ。

 

 フランとぽろたんの乗った光竜ライトドラゴンは上空を舞っているが、さらに上空からステラの放った大量の光の槍が迫ってくる。

 

「うわっ……今度は上から来たよ!しかもいっぱい」

 フランが叫ぶ。


「任せてっ!光竜ライトドラゴン、防御を上に集中させて!」

 ぽろたんは光竜ライトドラゴンに命令する。

 

 光竜ライトドラゴンの上方に大きな魔法陣が出現し、降り注ぐ光の槍を防いだ。

 

「へえ……これを防いだ人間は初めてだよ。褒めたげる。ふふっ」

 ステラは子供の様な笑顔で笑っている。

 

 

 光竜ライトドラゴンは、上空を舞い続けている。

 ステラの近くに寄ろうとするものの、一回辺りの攻撃が重く、近づいたと思ったら攻撃が来て回避のために離れているので、結果としてステラの周囲を回り続けている。

 

 光竜ライトドラゴンの速度は落ちてはいないが、ぽろたんの表情には疲れの色が見え始めていた。

 

「ぽろたん、大丈夫?」


 フランはぽろたんを心配そうに見つめる。

 

「大丈夫……ちょっと疲れただけ。でも光竜ライトドラゴンがステラの特級魔法を防ぐ度に魔力がごっそり削れて行くのを感じるの。あま余力は残っていないかも……」


「そうだね……それに対してステラの方は、特級魔法を連発しているのに、まだ全然余裕って感じだよ……この勝負、長引くとこっちが負けるよ」


「うん……こうなったら一か八か突っ込むしか無いね」


「そうだね……とはいえ、ステラに近づく事すらできないから……何かいい方法はないかな……あ、そういえばレンにもらったスキルストーン、まだ残ってる?」


 フランはふと何かを閃いた。


「あるけど……でもスキルストーンで使えるのは中級魔法くらいだよ?」


「持ってる石の種類は何?」


「えっと……蒼の雷鳴ブルーインパルスは使っちゃったから、残ってるのは地獄の業火ヘルファイア翠の疾風リーフハリケーンと……あとこんなのもあるよ……魔法の鏡バウンサーミラー


「それだ、魔法の鏡バウンサーミラーを使おう!たしか、攻撃魔法を跳ね返すスキルだったよね」


「そうだけど……魔法の鏡バウンサーミラーは魔法の鏡を出現させて、向かってくる攻撃魔法を跳ね返す事はできるけど、向かってくる魔法の威力が高いと鏡が割れちゃって結局効果がないっていう魔法だよ。これ中級魔法だから、ステラの特級魔法を跳ね返すには魔力強度が足りないんじゃないかな……」


「うん、そうだね……でも、その魔法の鏡バウンサーミラーは、同系統の魔力を注ぎ込めば強度の補強が可能なハズだよね。魔法の鏡バウンサーミラーの属性は何だった?」


 ぽろたんはそう言われて、少しの間考え込んだ。

 そして、何かを閃いた。


「あ、闇魔法だ!」


「そう、魔法の鏡バウンサーミラーは闇魔法だから、闇竜ダークドラゴンの魔力を注ぎ込めば威力の増幅が可能なはずだよ。ステラの使ってくる特級魔法の属性は光属性だから、闇竜ダークドラゴンとは相性が悪いけど、闇竜ダークドラゴン魔法の鏡バウンサーミラーのスキルを合わせれば一時的にステラの攻撃を跳ね返せるかも」


「それで行こう!もうすぐ光竜ライトドラゴンの魔力も尽きちゃうから、そうなるともうそれしかステラの攻撃を防ぐ手は無いよ……でも、防御はできたとして、ステラに私たちの攻撃が効くのかな」


「きっと効くと思う。レンさんに聞いたんだけど、ステラは攻撃に絶対の自信があるから防御は全くしてないんだって。あれで皮膚が鉄より硬いとかだったらもうお手上げなんだけど、防御力自体は普通のプレイヤーと変わらないどころか、職業が戦闘職じゃないメイドだからこっちの攻撃が当たりさえすれば倒せるはずだよ」


「攻撃が最強すぎるから、防御は一切してないんだ……ステラの唯一の弱点がそこだなんて、盲点だね」


「……ま、今まで攻撃を一撃でも当てた人はいないだろうけど」


「でも、勝機が見えてきたね」


「うん。私たちの方は、ステラの攻撃を防ぐのは闇竜ダークドラゴン魔法の鏡バウンサーミラーのスキルストーンが最後の頼みだから、これが最初で最後のチャンスになると思う」


 フランとぽろたんは互いに顔を見合わせる。

 次で決めようと言う合図だった。

 

「反撃開始だね!」


「ステラに私たちの力を見せてあげる!」


 光竜ライトドラゴンの上から、二人は地上のステラを睨みつける。

 ステラは、二人と戦闘になってからまだ一歩も動いていない。

 二人が避け続けているだけなのだ。


 だが、二人にはまだ希望があった。

 ステラは二人の表情から、何かを察した。


「あの子達、次で最後の勝負に出る気かな……あははっ、いいわね。じゃあ、全力で迎え撃ってあげる」

 ステラは子供のように笑う。

 そして、二人を迎え撃つべく、両手を出して掌の先に集中し、魔力を高めて行くのだった。

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