第62話 決勝戦・9

 バトルロイヤルをライブ中継しているスタジアムでは、現在観客達が異様な熱気に包まれていた。

 

「あのステラってメイド少女があっさり優勝かと思ったけど……わからなくなってきたぞ」


「チート無双なメイドに対抗しているあの双子の少女達も何者だよ!」


「特級魔法と召喚竜の戦いなんて見た事ねーぞ!」


「こりゃ、どうなるか全然わからなねえ……姉ちゃんビールくれ!」


「おにーさんありがとー、一杯900円ね」


「高けー、でも旨めー」


 レンはそんな観客達の様子を眺めながら、ホッと胸を撫で下ろしていた。

 

「フランとぽろたん、さすがだなぁ……あのステラさんとここまで互角に戦えるのとまでは思ってなかったよ」



 ——バトルロイヤルが始まる前の事だった。

 

 

 レンとミオは、フランとぽろたんにVRの中で特訓をしていた。

 

 レンは主にフランに剣技を教えていた。

 そして、愛剣ヴァイスブレードをフランに、世界樹の杖ユグドラステッキとスキルストーンをぽろたんに託した。


 ミオは主に、実践形式で模擬戦を行い、二人と何度も対戦をしていたのだ。

 そこでフランは加速装置ブースターの使い方を調整して行った。

 

 さらに、レンはフランとぽろたんをヴァシュランにあるティーポット王国に連れて行った。

 ティーポット王国で、ぽろたんは〝召喚竜〟のスキルを会得していた。



 ——レンはふと、その時の事を思い出していた。


「あの、レンさん」


 ティーポット王国のルフナ姫がレンに話しかけていた。


「なんでしょう、ルフナ姫」


「以前にもお話しましたが、このティーポットは竜を飼育して他国の竜騎士に竜を売ったり、または貸し出したりするドラゴン養殖が主要産業の国です」


「あ、はい。それは聞きました」


「だから、竜に関する知識も豊富ですし、他国にはいない特別な竜達が多くこの国にはいるのです。そんな特別な竜達と直接契約してその力を呼び出す〝召喚竜〟というスキルをも生み出しました」


「凄いですね。いつも感心してしまいます」


「はい、だからこそなのです。召喚竜に関するスキルは、我が国の最も重要な秘術でもあるんです。だから、普通は会ったばかりの人にこの秘術を教える事はありません。……それで、これは最後の確認ですが、秘術を本当にあの子に会得させても良いのですか?」


「わかっています。でも、お願いしたいと思います。僕は、最初はスズさんというPTパーティのメンバーに頼まれてあの子達を特訓する事になったので、僕も最初はあの子達の事はよく知りませんでした。でも教えていく内にあの子達の才能と、その純粋さに気がついたんです」


「そうなんですね……」


「あの子達は強い。でも、まだ決め手に欠けるんです。フランの加速装置ブーストはヴァイスブレードと組み合わさると、恐らく最強になります。加速スキルと言うのは割とメジャーなのでチート感があまりないように感じるのですが、本当はとても強い。でも、ぽろたんに方にはそれに見合うだけのスキルが無いのが今のあの子達の弱点です。このままではぽろたんがフランの足を引っ張ってしまう。でも、ぽろたんにも強いスキルがあれば、二人の力の相乗効果で、最強になる事だって可能だと思います。……僕はそれを見てみたい」


「わかりました。ぽろたんに〝召喚竜〟のスキルを授ける事を約束します」


「ありがとうございます。ルフナ姫」


「特に光竜ライトドラゴン闇竜ダークドラゴンは、世界でもこの国にしかいない貴重な竜です。この竜と契約して召喚できるようになれば、きっと二人の役に立つ事でしょう」


「そこまでしてもらえるなんて……この御恩は忘れません」


「いいんです。他ならぬレンさんの頼みなのだから……そのくらい、大した事じゃありません。でも、光竜ライトドラゴン闇竜ダークドラゴンは、使いこなすのは難しいかもしれません。私たちには、スキルを授ける事は出来ますが、本当に使いこなせるかどうかはあの子達次第ですよ」


「……あの子達なら、きっとやってくれると信じています」


「本当にレンさんはかわりませんね、ふふっ」



——レンは、回想から我に返った。


 目の前の大型スクリーンでは、光竜ライトドラゴンに乗ったフランとぽろたんがステラの特級魔法をあるいは回避し、あるいは防いでいる様子が映し出されている。

 

「本当に二人とも、この短時間で成長したんだな……」


 レンはしみじみとそう感じて、気がつくと目頭が熱くなってきた。

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