第61話 決勝戦・8

「ねえ、何が起こったの?」

 ぽろたんは叫ぶようにフランに言う。

 

 フランは辺りを見回した。

 丘の麓の方に人影が見えた。

 

「あそこだ。あの女の人が出した衝撃波にみんなやられたんだ……」

 フランは麓の女性を指差して言った。


「思い出した……私、レンさんに教わったの。覇王の波動ロードグラヴィティ……最強の全体魔法で、どんな敵だって倒せる、その代わり魔力消費が半端ないから、一度放てば全ての魔力がなくなる魔法だって……」

 ぽろたんは力無く言った。


「そん……な……今、あの人何発撃った?どんなMPしてたらそんな無茶苦茶な魔法を連発できるのよ……」

 フランは取り乱している。


「特級魔法の使い手……きっと……あの人、ステラだよ」


 ぽろたんは徐々に気を取り戻してきた。

 レンから聞いた話を思い出した事により、意識が覚醒する。

 

「ステラ?」


「うん。レンさんに聞いたんだ。昔、レンさんが一人で冒険してた時に、たまたま会った人がいたんだって。それがステラさん」


「一体どんな人なのよ?」


「人じゃないらしいわ。私、あまり専門用語に詳しくないから聞いた通りじゃないんだけど、ステラはこの第三地球サードアースの全てのコンピュータのボスみたいなプログラムなんだって」


「プログラム……なの?」


「うん」


「え、でもNPCは大会参加できないんじゃ……」


「NPCじゃないんじゃないかな?それに全てのコンピュータのボスなんだから、参加できないルールを勝手に変える事もできるんじゃないかな?……よくわからないけど」


「まじで……なんでそんなのと当たっちゃうのよ私たち……」


「知らないよ。でもステラはどんな魔法もどんなスキルも使えるってレンさんは言ってた。多分今の覇王の波動ロードグラヴィティでも魔力は殆ど消費してないと思う。気をつけないと」


「そうだね……レンさんのおかげで少し相手の事がわかったのはよかったかも。つまり……」


「すぐ次が来るし、ステラの攻撃を一撃でも食らったら私たちは即全滅する……一瞬も気が抜けないよ」


「わかった……作戦は逃げながら考えよう。とにかく温存なんて考えないで、私たちの全ての力を出し切ろう!」


「うん!」


 そう言うと、ぽろたんは呪文を詠唱し始めた。

 

 

 丘の上でフランとぽろたんが会話しているその様子を、ステラは麓から眺めていた。


「お話は……終わったかなぁ?」


 ステラの声は遠すぎてフランとぽろたんには届いていない。

 ただの独り言だ。

 

「じゃ、そろそろ次、行こっかな」


 ステラは腕をのばした。

 掌の先から、光の球が生まれる。


覇王の破壊光線ロードブラストレーザー!」


 ステラの手のひらから生まれた光球は、掌から離れると七つに分離して七つの光の球となった。

 そして、七つの光の球はそれぞれが光の筋を描きながら、バラバラの方向に飛んで行く。

 

 バシュゥゥゥ……

 

 ドオオオオオン

 

 光の球が地面に着弾すると、大爆発が起こった。

 七つの光球は同時に爆発し、辺りは爆発で何も見えなくなった。

 

 ステラは爆発が収まるのを待った。

 そして、ニヤリと笑みを浮かべた。

 

「へえ、今のを避けるなんて……やるじゃん」



 フランとぽろたんは、空中にいた。

 

 ぽろたんは先ほどの詠唱で光竜ライトドラゴンを召喚していた。

 フランとぽろたんは、光竜ライトドラゴンの背中に乗り、フランは光竜ライトドラゴンの背中に触れて加速装置ブーストを起動させる。

 

 加速装置ブーストはフランを伝って光竜ライトドラゴンに向けて発動させていた。

 光竜ライトドラゴンは空中を高速で飛び回り、ステラの放った光球を避けていたのだ。

 

 

「でも、逃げるだけじゃ勝てないわよ……覇王の光の弓ロードライトボウ!」

 ステラの腕に、光の弓が出現した。

 

覇王の光の矢ロードライトアロー!」

 光の矢も出現する。

 光の矢を弓に番える。

 


 その様子を上空、光竜ライトドラゴンに乗るぽろたんは視界の隅に捉えていた。


「嘘でしょ……ライトアローの最上級、特級魔法よ……ていうかあの人、特級魔法をどんだけ簡単に連発できるのよ……」


「ぽろたん、撃ってくるよ!防御を!」

 フランが叫ぶ

 

 「わかってる!光竜ライトドラゴン光の盾ライトシールドを出して!」

 

 ぽろたんの呼びかけに光竜ライトドラゴンはひと鳴きして応える。

 光竜ライトドラゴンの顔の前に、巨大な魔法陣が出現した。


 その直後、光に包まれる光竜ライトドラゴン

 ステラが放った光の矢を弾く。

 光の矢は粉々に砕け散った。


「た、助かった……」

 フランはホッと一息着く。

 

「良かった……て言ってもこれ、ルフナ王女から頂いた、ティーポット王国の秘術の結晶で、私たちの最後の奥の手だったんだけどね……はは……」

 ぽろたんはそう言って、自虐的に笑う。

 

「いいって、一撃でも食らったら負けるんだから、使えるものは出し惜しみしてらんないわ」

 フランはぽろたんを慰めるように言う。


「そうだったね……うん。全力で行こう」

 ぽろたんは気を取り直して、ステラを見る。


 こちらは秘奥義を出してしまったが、ステラにはまだ一撃も与えられていない。

 それどころか、ステラは余裕の笑みを浮かべている。


「……へー、やるじゃんあの子達……」

 ステラは上空を飛び回る光竜ライトドラゴンを眺めながら、呑気に感心していた。

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