第58話 決勝戦・5

「おそらく、ミオさんはあの高台の上にいるはず。今行って奇襲をかけるしか勝つ術はないよ」

 フランはぽろたんにそう言った。

 

「でも、どうやって?」


「ミオさんは、私たちの戦法を熟知している。何度も練習試合をやったからね。きっとミオさんは、私が加速装置ブーストで近づいて攻撃するのだろうと思っているわ。それだときっとミオさんに見破られて迎撃される」


「うん、そうだね」


「だから、まだミオさんに見せていない手を使わないと、この戦いに勝ち目はないよ」


「でも、どうするの?」


 フランは、少し考えてから何かを思いついたのか、笑顔になって言った。


「ぽろたんのスキル、ドラゴン召喚を使おう」


「え……いいけど」


「ぽろたん、召喚できるドラゴンの種類はいくつ?」


「えっと、火龍サラマンダー水龍リヴァイアサン土竜モグーラ飛竜ヴィーグル、それと光竜ライトドラゴン闇竜ダークドラゴンの6種類だよ。光竜ライトドラゴン闇竜ダークドラゴンは呼び出すのに少し時間かかるけど……」


「じゃあ、土竜モグーラで土の中を進もう。そしてあのミオさんがいる高台の所まで掘り進んだ後、地面から出てきて私のヴァイスブレードで一気に蹴りをつけるよ」


「なるほどね……でも、地面から出てきたところを襲われないかな?」


「さすがのミオさんでも地面から出てくるなんて発想はしないでしょ。それに、万が一気がつかれた時の為に、地面から出る直前に水龍リヴァイアサンを召喚して水の膜を形成するのよ。そうすればミオさんのエイムでもすぐには射撃できないし、あとは私の加速装置ブースターで一気に距離を詰めるわ。カティを倒した時の様に、一撃で倒してみせる」


「うん、わかった。それで行こう……いつ?」


「今すぐよ。ミオさんが移動してしまったら意味がないし、ミオさんの隠匿スニーク

スキルで隠れられたらもう探せなくなるわ」


「そうだね。じゃあ行くよ……召喚!」


 ぽろたんは杖を掲げ、召喚の魔法を唱える。

 すると、目の前に大きな魔法陣が現れ、その中から巨大な土竜モグラが出現した。

 

 モグラは爪が大きく、鼻はドリル状になっている。


「フラン、急いで乗って!」

 ぽろたんは先に土竜モグラの背中に乗り、その後ろにフランが乗った。

 すると土竜モグラは勢いよく腕を振り回し、地面の土を掻き出して下に向かって掘り進む。

 一瞬で二人を乗せた土竜モグラは地面の中に潜っていた。

 

 地面を物凄いスピードで掘り進めた土竜モグラは、ある程度の深さまで行くと次は横穴を掘り進めていた。

 

「この穴のゴール地点はミオさんのいる丘だけど、位置は大丈夫?」

 フランは前に乗っているフランに聞いた。


「うん。私と召喚竜は心で繋がっているから、私がイメージした所へ連れていってくれるの。さっき丘の位置は把握しておいたから、きっと大丈夫だと思う」


「そっか、多少ずれていても私の加速装置ブースターであとは一気に距離を詰められるから、何とかなるよ」


「うん、ありがとうフラン」


 ぐももももも……


 そう言っている間にも土竜モグラはすごいスピードで横穴を掘り進んでいた。

 既にミオがいるはずの丘の真下に来ているはずである。

 あとは真上に掘り進めるだけだ。

 

 ぐもももも……ぴたっ。

 土竜モグラは急停止した。


「こっからは上に上がるよ。掴まって」


 ぽろたんはそう言って、土竜モグラの首の辺りに両手を回してしっかりとしがみついた。

 フランも同じように土竜モグラにしがみつく。

 

 土竜モグラは上を向くと、一気に土を掘り進め、上昇した。

 

 ぐももももも……ばぁぁん!

 

 土竜モグラは地上に出た。

 勢い良く登って行ったので地上に出てもそのまま空中に飛び出ていた。


 フランとぽろたんは、空中から落下しながらミオの位置を探す。


 いた!

 

 何が起きたか分からず、驚愕の表情を浮かべるミオが近くにいた。

 土竜モグラが出てきた穴の位置取りは完璧だった。

 

 地面に着陸したぽろたんは間髪入れずに召喚の魔法を発動させる。

 

「召喚!……水龍リヴァイアサン!」


 土竜モグラが消滅し、地面に浮かび上がった魔法陣から水龍リヴァイアサンが出現する。

 水龍リヴァイアサンは勢いよく辺り一体に水を吹き出し、水飛沫で周りが見えなくなる。

 

「今よフラン!」


「任せて!加速装置ブースト!」


 フランは、空中で覚えていたミオの位置に向かって一気に加速する。

 そしてヴァイスブレードを抜き、ミオのいるはずの場所に向かって切り付けた。

 

「やっ……てない……」


 ヴァイスブレードは空を切る。

 空振りだった。

 

「そこまでよ!」


 後ろからミオの声が聞こえる。

 

 フランが振り向くと、ミオはナイフを抜いてぽろたんの首元に当てていた。

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