第56話 決勝戦・3

「ねえ、戦うって、あんなのとどうやって戦えばいい?」

 

 ぽろたんはフランに聞いた。


 カティはまだフラン達を見つけられずにいた。

 周囲をしきりに見回している。 

 

「うーん、あの衝撃波の範囲に入っちゃうと一撃で倒されるし、遠くから攻撃するか……」

 フランは頭を悩ませて考え込んでいる。

 

「はあ、こんな時にミオさんが居てくれたら楽なんだけど……」

 ぽろたんはため息を吐く。


「ぽろたん、決勝戦では、ミオさんも敵なんだよ。むしろミオさんがいたら私たち、更に追い込まれる事になるんだからね」


「そ、そうだね……困ったね」


「あ、そういえばぽろたん……始まる前にレンさんから何かもらってなかった?」

 フランはふと、大会が始まる直前の事を思い出した。


 レンはフランに魔法剣ヴァイスブレードを渡していた。

 そして、ぽろたんには別のアイテムを渡したのだ。

 

「あ、うん、困った時に使ってくれって言われて渡されたよ。この大会、アイテムの持ち込みは不可だけど、この魔法石はメインウエポンに組み込む事で発動するから、メインウエポン扱いになるんだ」


 ぽろたんはそう言って、宝石の様な石を取り出した。

 様々な効果の詰まったスキルを発動できる、スキルストーンだ。

 スキルストーンは単体でも使用できるが、ぽろたんのメインウエポン〝世界樹の杖ユグドラステッキ〟の先端に嵌め込む事で、より威力を増幅して使用する事ができる。


 スキルストーンは通常、アイテム扱いで持ち込み禁止になるのだが、世界樹の杖ユグドラステッキの付属パーツとして登録していればメインウエポンの一つとして持ち込む事ができる。

 ルールブックを確認していた時にその事に気づいたレンは、一応持っていくと良いと言って、いくつかのスキルストーンをぽろたんに渡していたのだ。


 とはいえ、スキルストーン自体は中級魔法が込められているだけの消耗アイテムなので、それほど強い効果が見込める訳ではない。

 

 しかし、打つ手の無くなったフランとぽろたんにとっては、使い捨てのスキルストーンにも縋りたい気分だった。

 

「よし、何とかしてこれを使ってこのピンチを切り抜けよう……」

 フランは思いつきでとりあえず言ってみた。

 

「でも、どうやって?」


「それは……うーん……」


「あ、良い手がある……かも」


「本当?」


「うん、ちょっと耳を貸して」

 ぽろたんに言われて、フランは顔を近づける。

 

「なるほど……よし、一か八か、その手で行こう」


「成功するかわからないけど……本当に良いの?」


「いいって、負けたらそこまでだから気にしないで思いっきりやってみよう」


「うん」


 フランとぽろたんは頷き合う。

 そして二人は動いた。

 

 

「我……索敵不能……手当たり次第殲滅フェーズに移行する……」


 カティはフランとぽろたんを探すのを諦め、力を溜める」

 

「滅——滅——滅——……」

 

 ヴォォン!


 ヴォォン!


 ヴォォン!


 ドオオオォォン……


 衝撃波が辺り一面にばら撒かれ、無差別に破壊される。


 衝撃波は何度も繰り返して放たれ続け、木々や岩は容赦無く切り刻まれ、破壊され、地面は抉り取られていった。

 

 林だったはずのカティの辺りは一面、荒地と化していた。

 

「敵……どこ……いない……我、再び手当たり次第殲滅モードを発動……」


 その時だった。

 カティの正面、荒地の向こうにあるまだ倒されていない樹木の影からぽろたんが姿を現した。

 

「我……敵生体発見……殲滅スル……」

 カティの目が赤く光る。

 

 カティは腕を伸ばし、力を溜める。

 カティはぽろたんに向かって腕を伸ばし、衝撃波を放った。


「滅——」


 衝撃波がぽろたんに向かって一直線に放たれる。


「今だ!スキルストーン発動!」


 ぽろたんは持っていた世界樹の杖ユグドラステッキをカティに向けた。

 杖の先に取り付けられていたスキルストーンが青い輝きを放つ。

 

蒼の雷鳴ブルーインパルス!」


 ぽろたんの杖の先から青色のプラズマの光が放たれた。


 カティの腕から放たれた衝撃波と、ぽろたんの杖から放たれたプラズマは互いに一直線に進んで行き、衝突した。

 

 ドォォォン……

 

 衝撃波とプラズマがぶつかり合った瞬間、激しい爆発が起こり、辺りは煙に包まれた。

 

 パリンッ……

 

 ぽろたんの杖に仕込まれたスキルストーンが砕け散った。

 

 カティは煙でぽろたんの姿を見失ったが、構わず腕を伸ばしたまま再度衝撃波を放った。

 

「滅——」


 ヴォォン!

 

 衝撃波はぽろたんのすぐ脇を抜けていった。

 

「うわっ……」


 思わず声を上げるぽろたん。

 

 その声を聞き、カティは不敵な笑みを浮かべる。

 カティは煙の中、ぽろたんの位置を特定して腕の向きを調整する。

 

 カティの腕は正確にぽろたんを捉えていた。

 

 滅——

 

 カティが衝撃波を放つ。

 その直前、カティの腕に鈍い衝撃が走った。

 

 カティの目の前にはフランがいた。

 フランは、加速装置ブーストを使って、一瞬でカティの側まで来ていたのだ。

 

 カティは慌てて腕をフランの方に向けようとした。

 しかし、カティの腕は無くなっていた。

 

 カティの腕は、フランのヴァイスブレードにより、既に切断されていた。


「我……わ、我……」


 カティの目に動揺の色が浮かぶ。

 その直後、さらにフランはヴァイスブレードを振り降ろし、袈裟掛けにする。


 カティの胴体が真っ二つに切断され、上半身が崩れ落ちた後、光となって消滅した。



「ふう……なんとか倒したよ」

 フランはため息を吐いた。

 

「あ……あぶなかったぁ……」

 ぽろたんはその場にへなへなと倒れ込んだ。

 

「あと一瞬遅かったら負けてたね……」

「うん」


 フランとぽろたんの二人は顔を見合わせて笑う。

 

 林だった辺りは、カティによって周囲一体が荒地になっていた。

 それにより、上空よりフランとぽろたんの二人の姿を捉えていた者がいた。

 

 

 宇宙戦艦ウロボロスは、主砲の照準をフランとぽろたんの二人に向けた。

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