第55話 決勝戦・2
その頃、ミオは小高い丘の上にいた。
ミオは
〝サバゲのアン〟と呼ばれたその女性プレイヤーは、サバイバル戦となれば負けなしのPVP上級者であった。
しかし、如何にサバゲのアンと言えど、姿も音も無く忍び寄って来たミオには気づいていなかった。
ミオはサバイバルナイフを抜き、サバゲのアンの背中に切り付けた。
仕留めた!
……と思ってミオは油断してしまった。
「なにっ!」
突然の背後からの攻撃に慌てるアン。
まだ
ミオは脚を切りつけられた。
すぐさま腰に挿していたハンドガンを抜き、アンな向けて発砲する。
「くっ……ここまで……か」
確実にヘッドショットを決め、アンの
アンは光となって消滅した。
ミオの方も、手傷を負ってしまった。
痛みは無いものの、足をやられて動きが一気に鈍っていた。
「
その時だった。
ドオオオォォォン……
ミオの背後で大きな爆発音が響いた。
慌てて振り向くミオ。
……辺りが、真っ赤に染まっていた。
ミオは小高い丘の上にいたのでその様子を見る事ができたのだが、どうやら麓で大きな爆発があったようだ。
……一体、何があったの?
澪は姿を隠しながら、注意深く辺りを観察してみる。
よく見ると、遠くの空に何かが浮かんでいるのが見えた。
それは徐々に近づいて来て、やがてその姿をはっきりと捉える事が出来た。
——宇宙戦艦である。
空に、巨大な宇宙戦艦が浮かんでいた。
先ほどの爆発はあの宇宙戦艦から放たれた物のようだ。
「ひええ……なにあれ……あれもプレイヤーなの?」
ミオは戦艦のその大きさに驚愕していた。
実際プレイヤーなのであった。
〝宇宙戦艦ウロボロス〟と言う名のそのメインウエポンは、ウエポンと呼ぶには規格外すぎる超巨大な兵器である。
当然入手は困難を極めており、1サーバーに1体しか出現しない
二十四時間ゲーム内にいる様な廃ゲーマーくらいしか手に入れられないような物ではあるが、その分
それ故バトルロイヤルが始まる際には運営の内部でも揉めており、この宇宙戦艦を使用可能にするか否かで意見が分かれていた。
結局、今回は最初なので様子見とデータ取りの為に使用可となったのだが、ステータス調整がされて防御力はかなり落ちる事となった。
防御力が低いので下手に使用すれば単なる大きな的になりかねない。
そこでプレイヤーは、予選ではこのメインウエポンを使用せずに他のメインウエポンで戦い、決勝になったらメインウエポンを入れ替えるという作戦に出たのだった。
防御力が落ちているとはいえ、宇宙戦艦ウロボロスの攻撃力は他のメインウエポンの比ではなく、主砲のレーザーカノンは一度放てば半径50m四方が焼き尽くされ、逃げる間もなく倒される。
しかも高度一万メートル上空に浮かんでいるので、対空装備がないプレイヤーには、簡単には倒す事が出来ない。
さらにこの宇宙戦艦ウロボロスのプレイヤーは、メインスキルに〝鷹の目〟を使用している。
鷹の目は離れた場所にいるプレイヤーの位置を正確に把握する事ができるスキルであり、このスキルもまたチート級のレアスキルである。
この鷹の目とウロボロスの主砲を組み合わせた戦法は最強だった。
テレビモニターの向こうで配信を視聴していた人々は、もはやこのウロボロスのプレイヤーが優勝確実だろう……という雰囲気になっていたのである。
「あれに見つかったら確実に負けるわ……」
ミオはその場を動かず、観察に徹する事にした。
丘の麓に一人のプレイヤーが姿を現していた。
プレイヤー名〝コマンドー〟と呼ばれるその人物は、対空ロケットランチャーを背中に装備していた。
「あの人……宇宙戦艦を倒してくれるかも……」
ミオはそんな期待を込めて、コマンドーの姿を追っていた。
コマンドーは片膝をつき、背中に担いでいたロケットランチャーを取り出して構え、ウロボロスを目標にセットしてスコープを覗く。
あのロケットランチャーなら破壊できるかも……ミオは固唾を飲んで見守る。
しかし実はこの時、ウロボロスの主砲が向きを変えていた。
ウロボロスに搭乗しているプレイヤーのスキル〝鷹の目〟がコマンドーの姿に気が付き、主砲の照準をコマンドーに合わせていたのだ。
そして間髪入れず、ウロボロスの主砲、レーザーカノンが発射された。
コマンドーは自分が狙われていた事に慌てて気がつき、ロケットランチャーを放った。
が、照準が上手く定まっていないまま発射されたロケットランチャーはウロボロスを掠めて遥か遠くに飛んで行ってしまったのだ。
そしてコマンドーはレーザーカノンに焼かれて
コマンドーのいた辺り一面が火の海になり、燃え盛る。
ミオは、その光景を唖然した表情でただ見つめていた。
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