第53話 森林の攻防・下
フランは、ル・レクチェから距離を取った。
ル・レクチェは辺りを見回している。
「フラン……」
小さな声が聞こえて、フランは驚いた。
「フラン、私よ……」
姿は見えなかった。
しかし、フランは声で誰かはわかった。
「ミオさん、いるんですか?」
フランも小さな声で返す。
「うん、近くにいるわ。今は私のスキル
「それで分からないんですね。ミオさん、さっきは助けてくれてありがとうございます」
「そうなの。ねえ、とりあえずここは共闘しない?」
ミオはまだ姿を隠したままだ。
「悪い冗談です。私が断ったら、今度は姿が見えないミオさんに狙われるんですね」
「そうとも言えないの。あのル・レクチェのスキル
「どう言う事ですか?」
「つまり、私のスキルで姿を隠していても、自動で防御されちゃうからル・レクチェに私の攻撃は当たらないって事、そして一度防御されて私の場所を特定されたら、あの触手に刺されてやられるわ……私一人では倒せないのよ」
「なるほど……そうですね。私も一人では勝てそうにありません。おまけに、ぽろたんも見つかったらやられちゃいます」
「でしょ、だったら取る手は……共闘するしか」
「分かりました。共闘しますね……でも、何か策はあるんですか?」
「あるわ……いい?……」
フランは、耳元にミオの存在を感じた。
ミオが作戦を耳打ちしてきた。
「……なるほど。それで行きましょう!」
「くすくす、隠れたってムダですわ……私の
ル・レクチェは両手を翳し、手当たり次第に触手を出してあちこちを切り刻んで行った。
木が次々に倒れて行く。
「レクチェ、こっちよ!」
フランがル・レクチェの目の前に姿を現した。
「やっと、観念する気になりましたのね……
ル・レクチェの手から伸びる触手が一気に伸びて、フランに突き刺さる。
……その直前、ギリギリまで待ってフランは身を躱して触手を避けた。
「今よ!ぽろたん!」
フランは叫んだ。
「
ル・レクチェの後方から声が聞こえた。
「後ろ?」
ル・レクチェの後方から竜の火炎が襲い掛かる。
しかし、素早く戻って触手から盾状に形を変えた
「ムダですわ!私の
火炎によって
しかし、直ぐに再生して、元の触手の姿に戻る事ができる……
しかし、その触手が溶けて再生するまでの、ほんの一瞬の隙を狙って、待っていた者がいた。
「この時を待っていたわ!」
バシュッ!
見えない位置から放たれたレーザーが、ル・レクチェの身体を貫いた。
「……っ!……なっ!」
ル・レクチェは声にならない悲鳴を上げる。
直後、
ミオはレーザーライフル『シュトロイゼル』を構えていた。
「さよなら」
そして、再びシュトロイゼルのトリガーを引く。
レーザーがル・レクチェの身体を貫通し、ル・レクチェは地面に倒れて消滅した。
ル・レクチェが消えると、触手もまた同じ様に消えたのだった。
「やった……やりました!」
ぽろたんはガッツポーズする。
「何とか……勝てたわね」
額の汗を拭くミオ。
「あ、プレイヤーはあと何人?」
フランはスマホを取り出し、覗いた。
「どう?」
心配そうにミオが聞く。
「私たち、予選……通過しました……」
スマホを見据えたまま、震える声で、フランは言う。
「やったね!」
ミオは思わず叫んだ。
「え、ほんと?……よかったぁー」
ぽろたんはその場にヘナヘナと座り込んだ。
「予選……終わったんだ……」
フランはぽろたんの方に駆け寄る。
隣に腰掛けて、ぽろたんに抱きついた。
「きゃー、予選通過なんて、夢みたい!」
フランはぽろたんを抱きしめながら言う。
「そうだね。鈴姉さん、私たち、やったよ……」
ぽろたんは、空を見上げていた。
目の端に涙が溜まっていた。
「ふふっ、仲良いね」
ミオは、そんな二人を温かい目で見守っていた。
——そして、予選は終了した。
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