第50話 ゲート前の攻防・上
——10分後にエリア03・市街地が場外になります。該当エリアにいる方は速やかに移動して下さい。移動しない場合、場外になった時に即失格となります。繰り返します……——
「エリア03の市街地って……ココじゃん!」
フランが叫んだ。
「まずいね。暫くこのビルに隠れてようと思ったのに……十分以内に他エリアに移動しないと」
ぽろたんも顔に焦りが見える。
「他エリアって……どうやって移動するの?」
フランは首を傾げる。
「他エリアにはゲートを通って移動するんだけど……」
ぽろたんはスマホを取り出し、マップを開いた。
「ここから一番近いゲートは……この道をまっすぐの所にあるみたい」
「よし、すぐ行こう」
「いや、ちょっと待って小夏。今は、このエリアにいる全員がゲートに向かっているはず。この市街地エリアにあるゲートは、東西南北にあると考えても四つだから、タイミング次第ではゲート前で乱戦になる可能性が高いわ……」
「そ、そっか……じゃあ、どうすればいいかな?」
「一旦、身を隠しながらゲート付近まで行こう。そこで様子を見て、制限時間ギリギリにダッシュでゲートを通過する。そうすれば余計な戦闘は避けられる……かも」
「なるほど、ぽろたん頭いいね」
「あのね……褒めても何にも出ないよ……それに、他のプレイヤーも同じ事を考えているかもしれない。上手く行くとは限らないからね」
「う……うん。じゃあ、とりあえず行こうか」
「わかった」
フランとぽろたんの二人は、建物の影に身を隠しながら移動してゲート付近までやって来た。
ゲート付近ではぽろたんの予想通り、激しい乱戦が繰り広げられていた。
「うわー、みるみる内に減ってる……」
フランはスマホで現在のプレイヤー人数を確認していた。
先ほどは99/100だった数字が、89/100に変わっていた……そして今数字は、88/100に変わった。
「暫くはここに隠れていよう」
ぽろたんは瓦礫の影から覗き込んだ。
目の前には少し大きな広場があり、そこで忍者と侍が斬り合いをしていた。
その奥に巨大な青い光の壁が見える、ゲートだ。
戦士がその隙を縫い、ゲートに向かって去っていこうと走って行く。
しかし、戦士の背中に火球が当たり戦士は倒れ込んだ。
どうやら魔法使いが近くにいるらしい。
戦士の姿が光の粒に消え、プレイヤー数は87/100に変わった。
「どうする?」
フランが聞いた。
「とりあえず、このまま様子を見よ」
ぽろたんが隣のフランに答えた。
その時だった。
辺りが眩い光に包まれ、視界が一瞬白く覆われた。
「な、何っ?」
「わ、かんない……」
フランとぽろたんは慌てふためき、あわててスマホを見た。
エリアが場外認定されるまでの時間はあと五分。
そして、プレイヤー数は85/100に変わっていた。
ぽろたんは、隠れていた瓦礫からそっと身を乗り出し、広場を見てみた。
先ほどまで争っていた忍者と侍が倒れていた。
広場の地面は一直線に黒い筋が伸びていた。
焦げているようだ。
地面からは煙が出ている。
魔法使いが急いで広場に出てきた。
事態が飲み込めず、慌ててゲートに向かって走って行く。
再び辺りが光に包まれた。
今度は、フランとぽろたんの二人は、はっきりと目撃していた。
人が一人は簡単に包まれる程の大きなレーザーのビームが広場を貫通し、魔法使いはその光に飲まれた。
ビームが消え去ると、そこには地面に焦げ跡が残り、地面からは煙が伸びていた。
魔法使いは地面に倒れ、やがて光の粒子となって消えた。
「な、なんなの……あれ」
「ビームだよ……でも、あんなウエポン……ありなの?」
フランとぽろたんは呆然としていた。
そして、広場に現れたのは、ロボットだった。
正確には、ロボットではなく人が中に入っているパワードスーツなのだが、見た目にはロボットにしか見えなかった。
ロボットはゆっくりとゲートに向かって歩いて行く。
そして、ロボットの側には、少女が一緒に歩いていた。
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