第48話 開幕

 週末、小夏とまどかは鈴音に連れられてザラートワールドにやって来た。


 鈴音が二人を連れてきたのは、ヴァシュラン島のロイヤルブレンド城だった。


  小夏とまどかの二人は、ロイヤルブレンド城どころか、ヴァシュラン島自体が初めてで、どきどきしながら鈴音の後ろを着いてきたのだった。



「さ、着いたわ」


 鈴音は振り向いてそう言った。

目の前に大きな扉がある。


「凄い……お城だ……」

「わたし初めて見た」


 小夏とまどかは王城の景色に圧倒されっぱなしだった。


「ふふっ、この奥で待ってるわ、さあ、行きましょう」

 鈴音はそう言って、扉を押した。


 扉の奥には、大広間が広がっていた。

 そこには、ルフナ姫が待っていた。


「ようこそ、可愛らしい来訪者さん」

  

 ルフナ姫はそう言って、ドレスの裾を摘んで会釈をした。


「こちら、ルフナ姫よ。姫、この二人が私の従兄弟のフランとぽろたん」


「まあ、可愛らしい名前」


 ルフナは目を細めで笑う。


「ふ、フランです……本名は紅林くればやし小夏こなつと言います」


 小夏は照れながら頭を下げた。


「ぽろたんです。紅林くればやしまどかです」

 まどかも続いて言う。


「まあ、丁寧な挨拶をありがとう。でもザラートここでは本名は名乗らない方が良いですよ」


「あ、はいっ、気をつけますっ」


「ふふふ。私はルフナ。このティーポット王国の第一王女です。後ろにいるメイド姿の女性はリゼ」


 ルフナは直立不動で立っていたメイド、リゼを紹介した。

 リゼは無言で会釈した。


「あの、ところで……私たちはここでどうすれば?」


 ぽろたんが質問を切り出した。



「そうでしたね。私は、スズさんに、バトルロイヤルに参加する貴方たちを強くして欲しいと頼まれたの。その為にここまで来てもらったのよ」


「強く……なれるんですか?」


 フランは拳を握りしめる。


「ええ、このティーポットの秘技を授けるわ。それにはぽろたんさんが適任かな。そして、フランさん、貴方には別の方に師匠をお願いしているの」


「別の人?」


「ええ、今ちょっとサブクエに出かけているのだけれど、そろそろ帰ってくる頃よ」


 ルフナがそう言ったと同時に、扉の開く音が聞こえた、


「あら、そう言っていたら、ちょうど帰ってきたみたい」


 大広間の扉を開けて入ってきたのは、レンだった。


「ルフナ姫、戻りました。あ、久しぶりですスズさん」


 レンはスズの顔を見て、にっこりと笑った。


「レンくん、久しぶり。受験勉強中なのに、無理を言ってお願いをしてしまってごめんなさいね」


「何言ってるんですか、同じコンフィズリーズのギルド仲間ですよ。全然もっと頼って下さいよ」


 レンくん、私たちと同じ位の年かな。受験生と言う事は、高校生かな……高校3年生だねきっと……フランはぽろたんに耳打ちしていた。


「レンくん、こちらがフラン、そっちがぽろたんよフランの方をみっちりしごいてやってね」


 スズは笑顔でそう言った。


「任せて下さい。僕の修行で必ずバトルロイヤルに勝利させて見せますよ」


 レンは腕をまくって言った。


「ええっなんか厳しそう……」


 フランが後ずさる。


「さ、じゃあ早速始めましょうか。大会まで一ヶ月しかないですから、時間が惜しいです」


 ええっ今から?とフランとぽろたんは口を揃えて言うのだった。





—— 一ヶ月後——


 それから月日は流れ、あっという間に大会当日になった。


 フランとぽろたんは朝一でVRセンターに出かけて行った。


「行ってきます。鈴姉、勝ってくるね。修行の成果を見せてくるよ」


 と言うフランこと小夏。


「鈴姉さん、テレビで応援しててね。ティーポットの秘技を思いっきりぶつけて来ます」


 と、ぽろたんことまどか。


「うん、今日は家のパソコンで見ながら、ずっとあなた達の活躍を応援してから、精一杯頑張ってらっしゃい」


 鈴音はそう言って手を振って送り出した。



 ——遂に、ハバネロワイヤルが開幕した。

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