第47話 夜
——夜。
「鈴姉、アップデートの発表みた?」
市倉家では、小夏とまどかが帰ってくるなり、早速その話題になった。
制服を着たまま、鞄を玄関に乱雑に置いたまま鈴音の仕事部屋に駆け込んできた小夏は、鈴音が振り向くのを待たずに話しかけてきた。
鈴音は苦笑しながらもスタイラスペンを置いて振り返る。
「見たわ。バトル好きの小夏には持ってこいのアップデートだったわね」
「うん、鈴姉、あたしバトルロイヤルやりたい」
鈴音の目は天井裏で鼠を見つけた時の猫の様に早く戦いたくてうずうずしているとでも言わんばかりに輝いている。
鈴音は、小夏がザラートワールドをやりたいと言い出した時から、きっとこう言うと思っていた。
遅れてまどかが部屋に入ってきた。
まどかはおそらく小夏の鞄を拾って一緒に部屋に置いてからこちらにやってきたのだろう。
「でも小夏、今のままじゃ、勝てないんじゃない?私たちそんなに強くないよ」
「う、うん。そだね……」
今度は間違って飼い主が良いと言う前に餌を食べようとして怒られた飼い犬の様にしゅんとなる小夏。
「私たちまだ始めたばかりでよく分かってないから、参加するには早いかなぁ……でも優勝したらプロフルダイブeゲーマーの道も開けるんだよ。挑戦してみたいなあ……ああもう分かんないや」
小夏は難しい事を考えると頭がすぐにオーバーヒートして電源が落ちるのだった。
鈴音は少し考え事をしていたが、やがて何かを決意したように、うんと頷いて言った。
「分かった。じゃあ、今度の日曜日に、私と一緒にザラートワールドに潜りましょう」
「え?」
鈴音の発言に驚く小夏とまどか。
「ちょうど良い機会だし、私の所属ギルドの人を紹介するわ。きっと力になってくれると思うわ」
鈴音は悪戯っぽい笑みを浮かべて言った。
「鈴姉のギルド……か。どんな人だろ、楽しみ」
小夏は分かりやすく表情が明るくなって、期待に胸を膨らませていた。
「鈴姉さんの……イケメンかな……それとも女性かな?」
まどかの方は、ひとり妄想を膨らませていた。
「さ、二人とも着替えてらっしゃい、夕飯にしましょう……まだ何も作ってないけど……」
「はーい」
二人はそう言うと、どたどたと部屋を出て行った。
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