第44話 アップデート発表会
ザラートワールド次期大型アップデートの発表会が始まった。
画面には、ザラートワールドオンラインの総合プロデューサー兼ディレクターの
それでいて、ゲームに対しては情熱を持っていて、ユーザーの意見はすぐに取り入れて、問題があれば、すぐに改修すると言う行動力とリーダーシップの持ち主だ。
馬鈴奨はその絶大なカリスマ性で、今、大人気のゲームプランナーである。
画面の中、馬鈴 奨が話を始めた。
「皆さん、お待たせしました。ザラートワールドオンライン、時期大型アップデートの、発表をさせて頂きます」
会議室のプロジェクターで鈴音と藤、八朔の3人は、身動き一つせずに発表会を見ている。
「ザラートワールドオンラインは、来週から1週間のメンテナンス期間を頂き、大規模なシステムの改修を行います」
「い、1週間だって?」
藤は声を上げた。通常のメンテナンスであれば、数時間、長くても1日2日で終わるのが常であった。
それだけの期間のメンテナンスで実装するとなると、相当なデータ量の改修が待っている……藤はそう感じていた。
「メンテナンスか明けた後は、皆さんには、今まで見た事が無いような、新たなザラートワールドの姿をお見せ出来ると思います。コンセプトは『一人でもみんなでも遊べるフルダイブRPG』です。 ……さて、具体的な改修は二つあります……」
すると、画面いっぱいにテロップが映し出された。
——第一のアップデート内容——
テロップが切り替わる。
——グラフィック強化&システム強化——
そして、馬鈴奨が力説する。
「まず一つは、グラフィックのクオリティアップとシステム全体のアップデートです」
「なんか過ごそうね、どうなるのかしら……」
鈴音は、いつになく緊張して発表を聞いている。
「現在、ヴァシュラン島でテストを行っているシステムを、ザラートワールド全体に適用します。これにより、ザラートワールドの全ての地域で、景色が現実と遜色無いレベルに、見た目が大幅にクオリティアップします。そして、NPCのAIが大幅に強化されます。全てのNPCが自分で考えて行動し、時にはプレイヤーと一緒に戦ったり、プレイヤーと普通に会話ができる様になります。NPCはまるでそこに生きているかのようにナチュラルに会話が出来ます。これからはもう、ザラートワールドの中ではプレイヤーとNPCの見分けがつがなくなるのです」
「なんと、そんな事が可能なのか……」
藤もゲームプランナーである。
それがどれくらい凄い事なのか、同じゲームプランナーとして、藤自身が良く分かっている。
「これにより、プレイヤー同士での
「え、なんで?」
鈴音は言った。
「これは、我々の今の技術ではどうにもならない事です。アップデートにより、NPCのもつ情報量が物凄く多くなります。しかし、NPCが得た情報を保存しておくには、
「確かに、普通の人間と変わらないだけの情報量を持つNPCのデータを、全てリアルタイムに保存する……と言うのは、現在の技術では不可能だろうね……」
藤も同意のようだ。
「でも、そもそもコンピューター中にいるんでしょう?それはデータではないの?」
鈴音は藤に聞いてみた。
「そうだな、おそらく一時的にデータを保存しておく
藤が解説してくれたが、鈴音にはさっぱり何を言っているのか分からなかった。
「呪文……だわ」
鈴音は一人呟いた。
「しかし、プレイヤーの皆さんの情報はちゃんと、徹底的にセキュリティを施した中央サーバ『アカシックレコード』内に記憶されますので、安心して遊んで下さい。プレイヤーの皆さんの情報の安全性は、何よりも最重要に設計されているのです」
「ほう、さすがだな……セキュリティ面にも抜かりがないとは。こう言う所がちゃんとしているからこそ、ザラートが人気があるのも頷ける」
藤は感心して頷いている。
画面の向こうでは、馬鈴奨が一息ついて水を飲んでいる。
——第二のアップデート内容——
そして、再び唐突に画面にテロップが映し出される。
——対人戦のフルリメイク——
「二つ目の大幅なシステム回収……それは……対人戦です!」
「な、なんだって!」
いちいち驚く藤。
「現在のPVPを完全に廃止します。そして新たに、大人数の対人バトルロイヤルモードを導入します。名付けて『ハバネロワイヤル』」
「ハバネロワイヤル……」
「このバトルロイヤルモードでは、システムを完全に一新しています。まず、
「ハバネロワイヤル……だと……これでは、全く別の新作と変わらないでは無いか……馬鈴奨、なんて開発者なんだ」
藤は思わず立ち上がって放心状態になっている。
「そして、このバトルロイヤルモード実装を記念して、大会を行います。開催日は一か月後の予定です」
「な、なんだか……」
鈴音は声が少し震えている。
「凄い……事に……なってきたっすね」
八朔も興奮していた。
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