第37話 トロイの木馬・1
「これは……トロイの木馬です」
アステルパーム、ネオテーム、アドバンテームが口を揃えて言う。
「バグではないの?」とステラ。
「そうです。限りなくバグに近い物ではありますが、意図して仕組まれたものに間違いありません。
「そんな……まさか……敵がエピス絶対防衛システムを通過して
「もちろん、エピス絶対防衛システムの守りは完全です。そう簡単に突破できるものではありません」
「ではどうやって?」
「では、それを説明する前に、福羽小春博士」
「……ふ……ふえっっ」
突然、三人のAIに声を揃えて指名され、小春は驚いて口に含んでいたコーヒーを吹きそうになる。
「博士、すみませんが、エピス絶対防衛システムとは何なのか、それを改めて説明して貰えますか?」
「……いいけど、何故?」
「ここにいる科学者の皆様方は、誰もがそれぞれの地球を代表する科学者たちです。しかし、最重要機密事項のエピス、そして、それを応用したエピス絶対防衛システムの全容に関しては、誰一人具体的な内容を知らない人ばかりです。そこでまず、その話から始めなくてはならないのです。ならば開発者である博士から話してもらった方が、皆も喜ぶでしょう。ぜひとも解説をお願いします」
円卓に座っていた科学者達がざわめき出した。
それぞれの地球で最も聡明な彼らにとっても理解が及ばないシステムの解説を、それを作った本人から直接聞けると来たのだ。
喜ばない者などいる筈もない。
小春は一息ため息をつくと、メガネを整え、立ち上がった。
「……わかりました。では、手短にですが、説明しましょう」
おお!と会議室の中で歓声が聞こえた後、拍手が巻き起こった。
小春は、拍手が鳴り止むのを待って話し始めた。
「かつて地球は、この宇宙に一つしか存在しませんでした、今は
小春は
太陽系から飛び立って行く宇宙船の
宇宙船は全部で十隻。
それぞれが飛び立った後、それぞれが惑星に到達した。
「地球を飛び立った宇宙船は、それぞれ惑星にたどり着き、テラフォーミングを完了させました。そして、たどり着いた順番に
小春は再び
一つの地球を真ん中に、その周りを九つの地球が取り囲む、そして幾何学的な模様がそれらの周りに描かれている。
「
小春の話に会議室の誰もが息を呑んで耳を傾けていた。
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