第3話 パーティは全滅しました

——ローグダンジョン•三層——



「アークホーリー!」

 古都華の手から放たれた光の槍がコボルトを貫き、コボルトは弾けて消える。



 古都華はダンジョンに来ると性格が攻撃的になっていた……



「あ、あのー、気楽にやろうって言ってませんでした?あと、コトカさんはヒーラーだからそんなに攻撃しなくても……」

 蓮は恐る恐る古都華に言ってみた。



「あ?何?」

 コトカに睨みつけられる。



「い、いえ、なんでもないです……」

 そう言って目を逸らす蓮。



「あーもう、コイツら全部片付けるわよ!アークホーリー!」


 古都華の手から次々に光の槍が放たれた。

 辺りが一面光に包まれ、爆発する。

 群れていたコボルト達が次々と倒れていく。



「さ、次よ次!もっと敵出てきなさい!」

 古都華はズンズンと進んで行く。



「ひ、ヒーラーとは……」

 蓮は頭を抱えながらも古都華に続く。


「こりゃ回復のMP持たないな……」

 ハルは冷静に呟いている。


「レンくん、ごめんなさいね……」


 スズが、苦笑しながら蓮の側にやって来てそっと耳打ちする。


「コトカちゃん、今日いないライと付き合ってるのは聞いてるわよね?」


「え、ええ。本人から一応……」


「そのライが、女の人と一緒いたのを見た人がいたらしくてね……それでコトカちゃん、機嫌が悪いのよ……」


「なるほど……」


「今日もそれであの子、もうライ抜きで攻略するって言い出したの」


「そう言う事情でしたか……」


「だから、レンくんには悪いのだけど、あの子の好きな様にやらせてあげてくれないかな?」


「わかりました。良いですよ。MP切れるまで撃たせてあげましょう」

 


 蓮とスズは苦笑しながら、古都華の後に続いた。


「あーもう、あんな男なんて!アークホーリー!」


 古都華の魔法が辺り一面を焼き尽くしながら、

一行は進んで行った。



 ……もちろん、そんなPTパーティで攻略できる程レイドダンジョンには甘くは無い。



 PTパーティの目の前に、突然レッサーデーモンが現れた。



「あ、ヤバいやつ来た……」

 蓮は一人呟いた……


「おりゃー、アークホーリー!」


 古都華が手をかざす。……しかし、何も出ない。


「あ、MP切れた……ごめんみんな……」



 その直後、レッサーデーモンの放つ火炎の球に包まれ、古都華の姿はあっという間に蒸発した。



「……ヒーラーでは無理だったか……」

 蓮は一人納得した。



「では、戻りましょうか……皆さん。」

 ハルがPTパーティにそう告げた。


「でも、レッサーデーモンどうするんですか?帰還のテレポートは戦闘中には使えませんよ?」

 レンはハルに聞いた。



「レンくん……もちろん、方法は一つです。さあ、武器を仕舞いましょう……」

 ハルは穏やかな声で、蓮に諭すように言った。


「あ、そうしますか……わかりました」

 蓮はハルの言いたい事を理解し、武器を仕舞った。


 直後、レッサーデーモンの火球がPTパーティ全員に飛んでくる。

 蓮は全身に軽い衝撃を感じ、直後目の前が真っ暗になった。



——パーティは全滅しました。



 真っ暗な中、その文字が空中に浮かび上がった。

 ダンジョンの深層では、PTパーティメンバーが欠けた状態で戦闘を続けて帰還の呪文を唱えるよりも、全滅して復帰ポイントに戻った方が手っ取り早い。



——復帰ポイントに戻りますか?



 真っ暗な中、再び文字が浮かび上がる。

 蓮は真っ暗な中、宙に浮かんだYESの文字に触れる。



 直後、目の前が真っ白になり、その後、蓮は見慣れた宿屋の部屋の中にいた。



「おかえり、レン」


 目の前に、手のひらサイズの妖精の姿が見える。 システムメッセージを伝える役目の妖精だ。


「今日は死ぬの早かったねー」

 妖精は笑いながら蓮に言う。


「うん、今日は大変かもしれない……シフォン、ダンジョン三層の入り口にテレポートしてくれるかい?」



 蓮は妖精に向かって言う。

 妖精の名前はシフォンと言った。



「オッケー。じゃ、目を瞑って」

 蓮は言われた通りに目を瞑る。


 ピロロン……


 独特の効果音が鳴る。

 蓮は目を開けた。


 ダンジョンの中に戻ってきた。目の前にPTパーティメンバーが揃っていた。



「おかえり。じゃ、皆揃ったね。ではまた出発しましょう」


 コトカは笑顔で腕を上げ、先陣を切ってダンジョンの奥に続く扉を開けて中に入って行った。



 やれやれ……と言う表情で後に続くハルとスズ。

 蓮も三人に続き、扉の、向こうに進んで行った。

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