第19話 世界の真実

「君は真面目だなあ」

村役場の係員は僕を見てそう感嘆した。


「まあやってましたからね」

僕は新たな仕事を見つけた。馬車馬の厩務員である。


「大したものだよ君は」

本当に心から称賛してくれているらしい。


「わがはいはまおうであるぞ」

ヒヨコ魔王もどうやら鼻高々らしい。


厩務員仲間も良くしてくれたが、僕の素性を言うと誰もが驚いた。


「そういう人がこんな仕事をやるって変わってるね」

少し年上の男性はそう言ってくれた。存在自体は珍しくないらしい。


「僕みたいな人はどうしてるんですか?」

大体は予想がついたが一応訊いてみた。


「冒険者だか勇者になって魔王を倒してくれてるよ」

白い歯でにこやかに笑ったので一瞬気が付かなかったが、どうも皮肉らしい。


「…僕、その魔王を収穫する仕事やってたんですよねえ…」

それにヒヨコ魔王も飼ってるし。


「不思議だろ?」

男性はにやりと笑ってそう言った。ハイすごく不思議です。


「あれは選抜なんだよ」

男は説明してくれた。


「魔王を作るだけつくって、一番強いやつが本当の魔王になる、みたいな」

ほほう?


「まあ本当にそんな魔王が出てこられちゃ困るんだけどね」

それでも魔王を買ってくれるのはありがたいからやってるんだと言った。


「だから君らみたいな存在が居てくれなきゃ困りもするんだけどさ」

かと言って彼ら個人に好意的にはなれないとも言った。


「君は違うけど、勝手なんだよね、転生してくる人って…」

まるで社会性や協調性がない人ばかりだと言った。


妙な事情で回っている世界であるらしい。

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