第17話 さまよう男

僕の目的は単純である。元の世界に戻りたかった。


「別に人生に不満なんてなかったしなあ」

地味な男が地味なまま畜産大学に進んだだけの短い人生である。


目的と言っても気がついたらこの村に居たのだから他に行く理由がない。


「そういえばそうなったら君はどうなるんだろうね」

僕はヒヨコ魔王にそう問いかけた。


「わがはいはまおうであるぞ」

ヒヨコ魔王は頭に乗ってそう言った。


「というより、これは転生というやつなのだろうか?」

つまり元の世界の僕は死んでいるのだろうか?


「そうだったらイヤだなあ」

短く平凡ではあるがそれなりに人生の轍があるのだ。


「あの子と少しでも話せば良かった」

魔王農場に来た後輩の女の子?の事である。


「あれとはなしてもいみなどないぞ」

久しぶりにヒヨコ魔王が別の言葉を発した。


「どうして?というか久々に別のことを喋ったね?」

少し驚いてそう訊いた。


「わがはいはまおうであるぞ」

しかしヒヨコ魔王はそれ以上の説明はしてくれなかった。

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