第14話 僕の記憶

僕の記憶は曖昧だった。


「ここ来る前は何をやってたんだい?」

ある時に場長はそう訊いてきた。


「畜産大学の学生でした」

僕は魔王を箱に詰めながらそう言った。覚えているモノはちゃんと覚えている。


「ああ、じゃあこういう事は初めてじゃなかったのか」

いや初めてですよ。


「お前さんは変わってるね」

場長はにこにこしながらそう言った。


「そうですかね?」

僕は特に暴れる魔王を縛って箱に詰めながらそう訊き返した。


「他の人とは随分違うよ」

なんとなく褒めてくれたらしい。


「なんか、四角い枠みたいの出さないし」

なんですかそれ。


「やたらキラキラの美男子でも美少女でもないし」

ああ何かそういう話を聞いたことありますね。


「いや、お前さんがブオトコって言ってるんじゃないよ?」

いいですよ地味な顔だって判ってますし。


「まあ約束通り収穫が終わったら自由にしなよ。それまでは手伝ってね」

場長はにこにこしながらそう言って、よいしょと箱を担いで台車に乗せた。


僕もいつか自分が収穫した魔王を倒す旅に出るのだろうか。何とも言えない。

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