第12話 魔王のツヤ

季節労働者となって2週間程過ぎた。週という暦の単位はなかったが。


「今年の魔王はツヤがいいね」

場長は呑気な事を言った。


「こういう魔王は凝った事をしてくれるんだよ」

場長は嬉しそうにそう言った。


「これ全部そうなら大変そう」

僕は常識的な事を言った。


「それを倒すのがお前さん方なんだろう?」

場長は笑いながらそう言った。その前段階での被害とかはいいのだろうか。


僕はゲームをあまりしないから判らないが、気になった事を訊いてみた。


「というかこれ全部形が違いますよね?」

人間ぽいのも居ればドラゴンぽいのも、訳の分からない形のも居る。


「魔王だしね」

そういうものらしい。


「おおい」

遠くから誰かの声がした。見れば村役場の係員だった。


「おおあんた、まだ真面目にやってるんだなあ」

係員はこの前と違って笑顔でそう話しかけてきた。


「どうもお久しぶりです」

僕はぺこりと頭を下げた。


「最初見た時は、ああこりゃすぐ居なくなるなと思ったけど」

案外真面目に続くじゃないか、と言ってくれた。


「ありがとうございます」

僕はそう言ったが気になった。


「でもまだ10日くらいですよ…?」

僕がそう言うと場長も係員も笑って説明してくれた。


「みんな本当にすぐ居なくなっちゃうんだよ」

3日も続けばまあ上出来だという。


「なにせ」

係員は皮肉な顔をした。


「働いた事もなさそうなのが多いんだ」

係員はそう言ってにんまりと笑った。

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