第24話
夜、月が光り、ひんやりとした夜風が漂う中、店の外でぼんやりと視線をさまよわせていると、ザッザッという土を踏む音とともに、その目的がやって来た。
「ほんと、時間つぶすのに苦労したわ。ずいぶん街はずれに住んでるのね」
リンがため息交じりに言葉を落とす。
「ちょうど空き家があったので」
表情を作って言葉を返す。
「ふうん。でもまさか人と一緒にいるとは思わなかったわ。しかも一緒に住んでるなんて」
「成り行きです」
「それだとしてもよ」
「それで、何の用です?」
話を戻す。昼間のあからさまな仕草、人のいない場所で話がしたいという意思表示を察した。その後、リンはこちらの帰路を尾行してこの場所を探り、ルヴィが寝静まる深夜まで待っていたのだろう。
「そうね……」
ギルドで見せていたものとは少し違う表情を見せる。
「数日前ね、うちの店に年のいった男が来たのよ。それで聞かれたの。『ヒュアート・ソードって男を知ってるか』って」
「……男の名前は?」
「心当たりありそうね?」
「どうでしょう」
魔剣を貸したことのある人間だろうか。店を移す際、そこで顔見知りになった客と次はどこへ行くなんて話はしない。また魔剣を借りたい人間が探している可能性はある。
「名前は言わなかった。だからあたしも『そんな人は知らない』って、適当にあしらっておいたわ」
仮にその男が魔剣を探しているのであれば、リンの言葉を聞いて、また違う鍛冶屋や武器屋を回るのかもしれない。ただ、もし……。
「もし、あたしに照準を合わせて来たんだとしたら、あたしの言葉なんて信じないでしょうね。それ以上は何も聞いてこなかったし、ただこっちの反応を見に来ただけなのかも」
こちらの想像と重ねたように言葉を続ける。この女がそう言うのなら、何か感じるものがあったのだろう。
だとすると――。
「どんな男だった?」
「背が高くって、こわもての、五十くらいかな。ああ、ちょっと君に似た雰囲気だったかもね、なんかとっつきにくい感じ」
最近、どこかで名前を聞いたあの男を思い浮かべてしまう。
「あれ、怒った? そんなことで怒る?」
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