第6話 先輩と後輩とは一番難しい関係性だと思う

先輩と後輩。

それは、様々な関係性の中では色々と難しい関係性だと言えるだろう。特に、男女となれば尚更だ。


誰もが一度は読んだことや見たことがあるライトノベルやアニメやドラマ等では、先輩は恋愛的なポジションでは正ヒロインに続くサブヒロイン的なポジションに収まることが多い。特に、ハーレム系等になると正ヒロインのライバル的なポジションに収まり主人公を惑わせる存在になる。


つまり、何が言いたいのかと言うと先輩とは一番難しい関係性だと言うことだ。


あるアニメの先輩は何かと世話を妬いてくれる。

とある漫画の先輩は何かと話しかけてくる。

あるドラマの先輩は何かと必要以上にボディタッチをしまくり場所を選ばず抱きついてくる。


・・・・・・だが、残念な事に現実は決してそんなに甘くは無い。

そもそも現実では、異性の先輩と仲が良いということ自体が少ないからだ・・・。


だがしかし、俺と芹香先輩だけは違った。

俺と芹香先輩が出会ったのは、まだ俺が中学一年生で芹香先輩が中学二年生の時だった。

俺が、中学時代に所属していた演劇部には新しく入部して来た一年生達に対してそれぞれ二年生が一人ずつついて演劇の基本を教えなければならないと言うルールが存在した。

そんな中で、俺についてくれた先輩が芹香先輩だった。芹香先輩はこの時からクールで必要最低限のことしか喋らなかった為、俺と芹香先輩の間には分厚い一枚の壁が引かれていた。


だが、芹香先輩が俺の担当になってから数週間が経った頃、俺と芹香先輩に一つだけ共通の趣味があることが分かり俺達は次第にだが打ち解けて少しずつだが話すようになった。

次第に話すようになった俺と芹香先輩は連絡先を交換し部活以外にも会うようになりお互いの趣味である映画鑑賞をしたり演劇の勉強をしたりしていた。


だが、俺が二年生に、芹香先輩が三年生に進級したと同時に俺と芹香先輩の関係性はガラリと変わってしまった。

俺は、新しく入部して来た一年生に教えることで忙しくなってしまい、芹香先輩は高校受験の勉強で忙しくなってしまい、お互い学校内で喋ったり、遊んだり、連絡を取ったりする回数が極端に減ってしまった。

そして、芹香先輩が中学を卒業してから遂に会うことは無くなってしまったが、さっきの様に時々LISO等では連絡を取ったりはしていた。


本当にこうして、芹香先輩と会うのは中学卒業以来だからもう三年ぶりぐらいになるだろう・・・。

改めてこう、面と向かって芹香先輩を見てみるとあれだな・・・。本当に美人だよなぁ・・・。

でも、芹香先輩は美人なんだけど基本的には表情を崩すことが無いし、氷の女王みたいな雰囲気を醸し出しながら威圧してくるから本当に怖いんだよな・・・。


事実。今も芹香先輩は凄く怖い顔をしてるし・・・。

ここは、どう切り抜ければいいんだろうか・・・?


「・・・・・・という訳で、俺と芹香先輩は仲良くなったんだよね」


「・・・・・・ねぇ、その言い方なに?ムカつくからやめて欲しいんだけど」


「えっ・・・いや・・・、芹香先輩が怖くって・・・・・・」


「えっ?何?聞こえなかったら、もう一回言ってみて」


「い・・・いや、なんでもないです。ご・・・ごめんなさい」


いや・・・まじで怖いんだけど・・・。

事情をちゃんと話せば機嫌は良くなると思って話したのに全然機嫌は良くならないし、逆にさっきより機嫌が悪くなってる気がするんだけど・・・。

まじで、どうしたら芹香先輩の機嫌を良くすることができるんだろうか・・・。


「いやー、まさか零ちゃんとせりかっちがこんなに仲がいいなんって思ってみなかったよ〜」


「・・・・・・美優。それは、どうゆう意味?」


「別に〜、特に深い意味は無いよ〜」


いや・・・美優よ。お前、度胸があり過ぎるだろう。

こんな状態の芹香先輩に、よくそんなことを言えるよな・・・。普通は言えないぞ・・・。

ってゆうか、この状況は色々とカオス過ぎるだろ。

半ば無理矢理中々の広さを誇る部屋に放り込まれると部屋の中には三人の美少女が居て、唯一の男であるプロデューサーさんはあれからずっと黙ってる。

本当にカオスな状況だな・・・。


「・・・ふーん、零時は友達に騙されてここに来たと」


「ま・・・まぁ、簡単に言えば・・・・・・」


「ってか、嫌だったらここに来た時に何で断らなかったの?断る暇ぐらいはあったんじゃないの?」


「い・・・いや、断る暇もなく話がどんどん進んじゃって・・・。断るにも断れなくって・・・」


まぁ、あれだよな・・・。せっかくプロのベーシストになれて俳優デビューするチャンスが転がり込んだのだから今更断ることはできないな・・・。


「って事は、零ちゃんも私達みたくアイドルになるってことかな?」


「はぁ?」


「えっ?」


「う・・・う〜ん、美優ちゃん。それはちょっと違うかな・・・」


・・・・・・一体、美優は何を勘違いしてるんだろうか。

俺のこんな容姿でアイドルが務まる訳がないだろうが・・・。


「確かに、海道くんの容姿はとても整っていてアイドルでも可笑しくありませんが、今回の花嫁プロジェクトは名前通り女性アイドル限定のプロジェクトなので男性の海道くんは参加することができないんですよ・・・」


「あ〜、確かにそう言えばそうだったね!」


「いや、俺はともかくそのプロジェクトに参加してるお前がプロジェクトのことを知らないでどうするんだよ・・・」


美優はきっと天然なんだろうな・・・。

まぁ、この場合は天然では無くってポンコツと言う言葉が似合いそうだけどなぁ・・・。


「それで、改めて聞きますけど俺は何でここに呼ばれたんですか?」


「そう言えば、そのことについてはまだ説明していませんでしたね・・・。まず、説明する前に海道くんはウェディングドレスプロジェクトの名前は知っていますか?」


「えぇ、テレビで聞いたことがあるので名前ぐらいなら知ってますけど」


「そうですか・・・。それでは、簡単になりますがウェディングドレスプロジェクトについて説明してから海道くんをこの部屋に呼び出したことについて説明しましょう」


小早川さんはそう言い俺に向かって、ウェディングドレスプロジェクトについての説明を始めてくれた。

小早川さんの説明によるとらウェディングドレスプロジェクトと言うのは「女の子達が一度は憧れるウェディングドレスを着て女の子達の夢を叶える」と言う内容だった。


「・・・・・・取り敢えず、説明する前に海道さんには座ってもらいましょう。いつまでも、その重たそうな荷物を持って立ち続けるのはキツイでしょうし」


「あっ・・・はい・・・、ありがとうございます」


今まで黙っていたプロデューサーさんが口を開きそう言ってくれた。

確かに、今までずっと立っていて足が限界になっていた為、背中に背負っていたベースを机の横に置きゆっくりとソファに座らせてもらった。

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