第4話 初対面の女の子を下の名前で呼ぶのは結構苦労するはずです
いやー。マジで昨日は散々な日だったな・・・。
結局あの後、俺が家に帰るまでの間にAAAGプロダクション側から自宅に連絡があったらしく、色々と疲れたまま自宅に到着すると家族全員から質問攻めにあった。
家族全員があまりにもすごい圧で押し寄せ質問をしてくるもんだから、言い訳を考える時間も無く正直にスタジオ・ミュージシャンのオーディションの事について説明をする事にした。
最初は、息子が大手の芸能人事務所であるAAAGプロダクションで働くのは親的に反対かと思っていたが、結果はまさかの真逆で両親は自分達の子どもが芸能人デビューするかもしれないとめちゃくちゃ喜んでいた。
確かに、俺はスタジオ・ミュージシャン以外にも俳優としてデビューするかもしれないが俺の本職はスタジオ・ミュージシャンだからあまり表舞台に立つことはないと思うけどなぁ・・・。
まぁ、ここで両親にこの話をしても理解するのには時間がかかるだろうと思い俺は両親に説明するのを諦めることにした。
因みに、俺はまだオーディションに合格しただけで正式にAAAGプロダクションには所属して居ないんだけどなあ・・・。
しかも、俺は今未成年だしAAAGプロダクションに所属するのには親の同意が必要なんだが親はそこら辺の事は理解しているんだろうか・・・?
俺は、そんな事を考えながら、中学時代の演劇部の先輩にLISOでAAAGプロダクションに所属する事になった事を伝えると後日こんな返信が届いた。
『ふんー。それは良かったわ』
「いや、素っ気なさすぎるでしょ!?」
先輩から届いた返信は、素っ気なさすぎるまさかの一文だけだった。俺は、思わず電車の中で先輩からの返信に対して大声でツッコミを入れてしまうところだった。
そしてそんな、俺は今現在休日にも関わらず電車に揺られながら約一時間半ほどかけてAAAGプロダクション本社に来ていた。
何故、休日にも関わらずAAAGプロダクションに来ているのかと言うと、つい先日斎藤からLISOで今日AAAGプロダクションに顔を出すように言われていたからだ。
因みに、俺自身は何故AAAGプロダクションに行くのかは全く知らないが、一応斎藤から言われていたギターだけは持って来ているが一体今日は何をやるんだろうか・・・?
先日斎藤と一緒に行った場所はAAAGプロダクション事務所であり、今回行くのはその隣にある十階建てぐらいあるどデカいタワーマンションみたいなAAAGプロダクション事務所の本社だった。
そんな、どデカいタワーマンションみたいな本社に入り、斎藤居ないため自分自身で受付けの人に事情を説明する。最初は、しっかりと通じるのか不安だったけど結果的には通じたのか直ぐにどこかに電話をしてくれた。
「海道さん!!お待たせしました!!」
「・・・あっ、小早川さん。別にそんなに待っていないのでそんなに走らなくっても・・・・・・って、その後ろに居る人は誰ですか?」
受付けの人に「担当の者が今向かいに行きますので、どうぞこちらでお待ちしてください」と言われ受付けの端の方でスマホをいじっていると反対側から聞き覚えのある声が聞こえてきた。
俺を向かいに来てくれたのは、先日もお世話になった小早川さんだった。
そんな、小早川さんの後ろには茶髪でボーイッシュな女の子がニコニコと微笑みながら俺を見ていた。
・・・・・・いや、マジで誰だこの子?まぁ、一応AAAGプロダクションに所属しているからアイドルか女優だと思うんだけど、ひょっとしたらテレビで見た事が無いからまだデビューしてない子かもしれないな・・・。
「ちょーっと!!初対面の女性に対して「誰」は無いんじゃないの!?一応、私も何回かテレビにも出たことがあるんだけど!!」
「えっ・・・まじで?一度も見たことないな・・・」
この子・・・アレだな。ボーイッシュでもあり結構初対面の人にでもグイグイくるタイプの子だな。
特定の人間としかつるまない俺とはあまり相性が良いとは言えないな・・・。
「えぇー、そんな事をはっきり言われたら結構ショックだな・・・。まぁ、私もデビューしてから日が浅いし名前を覚えられていないのは分かるけどさぁ・・・」
「わ・・・悪かったて。これから、覚えるから名前を教えてくれないか?」
「もぉー、しょうがないなー。ちゃんと覚えてよ!!」
「わ・・・分かったよ」
「私の名前は桜田美優!!歳は15歳で来年から高校1年生!!」
「15歳?って事は俺より年下になるのか・・・」
この子の名前は、桜田美優で歳は15歳か・・・。
俺は今年で17歳になるからこの子は俺より2歳年下になるのか・・・。
ってか、それにしてもこの子とても整った容姿をしてるよな・・・。まぁ、最近デビューしたばっかりって言ってもアイドルだから当然ちゃ当然か・・・。
それに、これからここで会うことになる女の子達はほとんどがこの子みたいなアイドルだからやっぱり容姿は整っているんだろうなぁ・・・。
本当にアレだな・・・。人生って何があるか分かったもんじゃないな・・・。今まで通りの人生を送っていたらアイドル達と出会うことはできなかっただろうな・・・。
「ふーん、君って私より年上なんだ。って事は、やっぱり敬語を使った方がいいかな?」
「いや、別に今更敬語を使わなくってもいいよ。元々、敬語とか使われるのは嫌な方だったし」
「じゃ、私の事は美優か、美優ちゃんって呼んでね!!私も、君の事を零ちゃんって呼ぶから!!」
「・・・零ちゃんは辞めてくれ美優」
「えぇー、折角可愛いあだ名を思い付いたと思ったのにー!!」
呼び方が美優か美優ちゃんの2つしか選択肢がなかったら圧倒的に前者の美優を選ぶに決まってるだろう・・・。
そもそもが、初対面の女の子の事を下の名前で呼び捨てにする自体が難易度高いのにちゃん付けで呼べる訳がないだろう・・・。
「美優ちゃん。そろそ時間なんだけどなぁ・・・」
「あっ、ごめんね千秋さん!!じゃ、零ちゃん早速行ってみよう!!」
「お・・・おい、待てって美優!?」
凄いな美優は・・・。自分の事を下の名前で呼ぶように求めたり、初対面の男の手を掴んで引っ張るし・・・。普通の女の子はそんな事は絶対にしないだろうな・・・。
俺は、そんな事を考えながら美優に引きずられながらエレベーターに向かって行った。
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