第3話:公爵家
都内のマンションの一室にて、引っ越しの荷物を”自分”で運び込んで設置まで済ませた私は人心地着いたところで。スマホを確認するも大した要件などは無い、両親と父の会社の人の数名くらいしか登録していないので来るとは思えないが。
(M.A.Eの調整くらいはしておこうかな)
父と母からの誕生日と高校入学記念という事で貰った二つのMAEを取り出す。MAE…Magic Assist Equipmentは私達魔法を使う者にとっては必需品と言える物で私も使用している。とは言え私の物は本来の物とは少々違うが。
いくら私が血族魔法特化とは言え普通の魔法もM.A.Eを使えば使用することが出来る。というかM.A.Eを使用するのが本来前提である。
本来M.A.Eの調整や整備を行うには専門の知識なども必要ではあるのだがその知識と技術はどういう経緯で覚えたかというと、父の会社のM.A.E調整担当者をしている人からこう言われた事が原因だった「自分の半身ともいえる道具の整備、せめて調整くらい出来なきゃ」この言葉を受けてから自分で出来るようにM.A.Eの事に関しては多少人に相談するこそあれど完全に自己流で自分のM.A.Eの調整から開発に発注まで行っている。
簡単に調整を済ませても本家に向かうには早いが食事してから行けばいいかと思い適当に準備を始める
(東京には何度か来てるけど。相変わらず人が多い…)
黒鉄家の本家である鳳凰院家は日本の公爵家で中でも収束系統魔法を得意とし、その血統には特別な魔法であるジャベリンを使えるという。名家の中の名家で日本に12ある公爵家の一門私が世話係兼付き人を任されたのはそこの長女で当主候補の一人なのだが。どうやら正妻が病死した後から後妻の子供たちを含む一部の連中から執拗な虐めを受けた挙句に彼女自身も引き籠り、ついでに当日付いていた傍付きのメイドも虐めに加担していた挙句、謎の衰弱によって病院送りにそれからというもの彼女に手を上げた者どころか近づく者は酷い衰弱を患うとの事。
「やれやれ、平和な日常生活を送りたいものです」
私の異能を使うことになった以前にも一応虐待の傷の治療という事でやって来た医者や魔法学者にもさっぱりわからないらしい。当主が気づいた時には控えめに言って地獄絵図。まぁ、生きてるのが不思議な状態にまで至ったらしいです。調べてもさっぱりわからないので古くからの仲の父を含む伝手を頼った末今に至ると。その話を最初に聞いた時私はドン引きしたものですが…まぁそれだけです。私にはどうも一部の感情や感覚が抜け落ちているようで、何が原因かは心当たりが多すぎてわかりませんが…。
私は一応魔法が使えない、ないしは大した魔法を使えないことになっている為国立のそれこそ貴族いや、日本では華族でしたか?そう言った魔法適正が高い方々が行くような学校行くのは少々憚られるのですよね。行きたいのは行きたいですが。
適当なファミレスで昼食を済ませ。向かうは鳳凰院家の本家、駅前でタクシーを捕まえて住所を告げるとギョッとされました。鳳凰院家は都内ではあるがいわゆる貴族街と呼ばれるような豪邸ばかりの場所にあるらしい、実際に行くのは今日が初めてですが確かに普通のタクシーでは行きませんか。
タクシーを貴族街の近くに止めてもらい徒歩で豪邸が立ち並ぶ住宅街を進む、見渡すだけでもメイド等の使用人や見ただけで分かる高級そうな服を着た人々。明日にはその一人になるのかと思いながら進んでいると鳳凰院家の屋敷に付いた。
鳳凰院家の敷地は他の貴族と比べても広いように思う。流石は公爵家と言ったところか。
インターホンを鳴らし名前と要件を告げる。
「黒鉄白亜と申します、今日からこちらでお仕事をする様にと聞いてきたのですが」
「あぁ、あなたね!?この忙しい時に遅刻して!」
(うん?遅刻?)
首をかしげていると門が開く、警備の人はリストの名前と比べて首を傾げているが…まぁ、入れてくれるなら。
そのまま屋敷に入ると直ぐに先ほど応答したらしい若いメイドさんが出て来た。
「あなたね!さぁ、こっち来て着替えて!」
有無を言わせぬ勢いであれよあれよと引っ張られクラシックタイプのメイド服を渡される。コスプレと言うにはおこがましいガチの物だ。いそいそと着替え着替えて部屋を出ると先程の彼女が扉の前で待っていた
「着替え終わった?直ぐに仕事に入るわよ!仕事はやりながら覚えればいいから!」
「は、はぁ…」
ため息をつきながら付いていくと案内された場所はキッチンだった。出来た料理が出ていき大量の洗い物がたまっている状況だ。どう見ても人手は足りていない。
「凛花!!あんたどこ行ってた!!」
同じ様なメイド服の女性が私を引っ張て来たメイドを怒鳴る。
「メイド長!この子連れてきたんですよ!仕事です!!!」
「そんなの来る予定だったかな…まぁ良いでしょう。あなた食器洗い出来る?」
メイド長と呼ばれた女性はゴム手袋を出して溜まりに溜まった未洗浄の食器等を指さす。
「え、えぇ。もちろん出来ます」
「じゃあお願いね!洗剤は直ぐにわかると思うから」
そう言ってメイド長は料理の乗ったワゴンを推しながら出ていった。
渡されたゴム手袋をひとまず置いて自分のM.A.Eの一つを取り出した
「適当に楽しましょうか」
そう言って魔法を行使した。
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