第2話:過ぎし月日と変化

 数年の月日が経ち私は十分な日本も覚え。最近は外で父と狩りをしている。

 父は人材派遣会社の社長らしいが殆ど此処で隠居をしている、父は日本でも屈指の名家の分家にあたるらしく。魔法の腕も高いらしい。


 私はこれでも貴族の娘だったらしいが対外的には存在しない娘だったらしく別に捜索されているということも無いらしい。

 私は世間一般の魔法をまともに使えない、その代わりと言っては何だが特殊な魔法特性と血族魔法が使える。血族魔法はその血族のみが使える魔法と言えば分かりやすいでしょう。


「白亜貴女泥だらけじゃない、シャワー浴びてきなさい」


 帰って来て早々お母さんにお風呂に突っ込まれてしまった。私が父と狩りや武術の鍛錬をして帰ってくると毎回泥だらけになってしまう。私は血族魔法の使用をまだ許されていない、居ないはずの人間が使えないはずの魔法を使えてしまったらどう考えてもややこしいからだ。


 洗面台に映る自分の姿を眺める、この数年でやっとまともな状態に回復した肉体は付きすぎない程度の筋肉とある程度発育のいい体だと思う。


「明日からは東京かぁ」


 今日は3月27日この家の本家のお嬢様の世話をして欲しいと分家の父にお願いが来たらしい。いや、お願いではなく命令と言って良いだろう。父はほぼ引退した身とは言え人材派遣会社の社長だ、それなりに顔が効く。適任者をよこすように言われたのだろうが私とそう歳の変わらない子のお世話係となるとそういない。



 私がシャワーから戻るとかなり豪勢な食事が用意されていた。家族の気づかいだろう。


「すまないな、お前にこんな事を頼む親を許してほしい」


「構いません、高校生になって上京と思えばなんてことはありませんから。本家の方に私の異能と魔法の事はお教えになったのですか?」


「いや、言っていない。だが本家の連中は目ざとい。使うにしても最低限…いや、出来れば使わないのが理想だろう」


私にはただでさえ使用者が限定される血族魔法に異能と呼ぶにふさわし魔法性質をもつ。


重々しい表情の父が話を続ける

「接続?同調だったか?恐らくそれならバレることは無いと思う。だが口外はしないほうがいいだろう。賢いお前ならわかるだろう?」


「買い被りですよ」


「そうか?」


「そんな重苦しい話ばかりしてないで食べましょう!冷めちゃいますよ」


お母さんのその言葉を皮切りに私達は話を切り上げて食事を始めた。



 私とて、父とばかり過ごしてきたわけじゃない。お母さんとの料理教室を始めとした家事もしっかりと仕込まれた、いつか自分でそつなくこなせるようになるためにだ。

 他にも一般常識程度の勉強も日本語を覚えるのと並行してしたが日本史以外は大して必要はなかった。体力が回復してからは、お願いして毎日のように父に仕込んでもらった戦闘技術は魔導士しとしてやっていくにしても私には公に魔法を使えない為だ、私が魔法を使う時はどうしようもない時か信用にたる相手との練習だけ。対人戦闘訓練だけなら父相手に身体防護障壁有でだがお墨付きを貰っている。

 少し前まで道内での進学校の中学に居たこともあり学力は問題ないし両親の仕事を手伝うこともある。父の職場の武闘派の方と模擬戦をしても魔法有りならフルボッコに出来る。


東京行きの準備が一通り終わった頃、私の部屋に父が入ってきた。


「白亜お前の魔法についてだがいいか?」


「わかったよ、お父さん」


「使うなとは言ったが白亜の使っていた身体防護障壁やインビジブルブレードは好きに使っていい。空間断絶は自重するように、転移もな」


「わかってますって。心配性ですねぇ」


「お前なぁ、親は子供を心配するものだぞ?お前はその年の割りに賢くおしとやかだが色々心配になるからな…」


 はて?そんなに心配させる事をしたかな?


「いざとなったら転移でも何でも使って逃げてこい。お母さんも俺も全力で守ってやる」


「ありがとうお父さん」



 その後、両親と別れの挨拶を済ませトランクケースを”異空間”に放り込んだ


「お前なぁ…」


「これくらいはいいじゃないですか、精々手品にしか見えませんよ」


「まぁ、手品と言えば良いわけにはなるか…」


「本当に便利よねぇ」


父に呆れられ、母にうらやましがられながら改めて別れを告げる。


「では、行って参ります。年末年始とか長期休暇には帰ってきますので」


「友達作れよ」


「彼氏でも作ってきなさい」


「なっ!?」

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