二 白一面に結晶

貴女が詩に取り組む 夜

世界と対峙している 夜

目の前に ペンとノート

ときに スマートフォン

PCのときもあるけれど

とにかく 眼前の白一面

貴女は戦いに臨んでいる


こんなこと誰しもされてることでしてよ

と 貴女は私の淹れた紅茶を片手に

じっと白一面を見つめている

それは 空気中を浮遊する言葉が

ノートに音もなく結晶するのを

待っているかのようで

私には出来ない


貴女がカップの残りを

すっと飲み干して ペンを取る

言葉の結晶を ノートの表面から

掘り出していくような 筆跡と筆圧

窓の外は雨 街の気配は遮られ

部屋には貴女の筆の音だけ


貴女が筆を止め ひとりうなずく頃

すでに零時を回り 別れの時間

椅子にもたれ 伸びをしながら

お嬢様は カップを片付ける私に訊く

わたくしの後ろで、そちらでも

新しい詩を考えてらして?

緩んだ貴女の笑みに 私は

ええ、今度は中々うまく書けそうです

そう返したものの 実は

貴女のことばかり考えていた


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