詩集 現代詩お嬢様、お手をどうぞ

小林素顔

一 お嬢様、お手をどうぞ

お嬢様 お手をどうぞ

そう声をかけて 初めて

貴女の手を引いた

雨上がりのみなとみらい

水溜りを飛び越え

ロングスカートの裾は

晴れ間の風にはためき

貴女はまた軽やかに

胸を張って歩き出す


テラスカフェで 貴女が

カフェラテを頼む時は

ご機嫌斜めのとき

抹茶ラテのときは

ご機嫌なとき

コーヒーをストレートで

じっくり冷まして飲む時は

私に話があるとき

仕事で感じたこと

ニュースで考えたこと

様々に話すお嬢様の

鳶色の瞳に見惚れていると

どう思います? と聞かれて

私は言葉に詰まる そして

やはり愚鈍ね、貴方は と

首を振るお嬢様の頭に揺れる

真っ赤なリボン 亜麻色の髪

それを 護りたいと思う


手助けする以外に

お嬢様に触れる術なく

お見送りののち 私は

夕暮れに浮かぶ白けた月に

見てんじゃねえよ と

にらみ返すのだった

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