第9話

「てなわけでさ〜」

会計を勝手に二人分済ませてしまったやつが嬉しそうに振り向いてくる。

「ん・・・」

とりあえず、一千円だけ渡そうとする。

「いやあ、コーヒー一杯だけでだしいいよ。しかも、お詫びってことにしてこれでチャラで・・・って無理か。」

ニシシと笑う姿はどこか腹立たしくも許せてしまうような顔をしていた。

「無論」

口ではそう言いながらむしろ許していた。まあ許していなかったらそもそもそんなことを口に出さずに根に持つのが人間か。口で言ってることの逆を解釈しなければ理解することができないというのはまた人間らしいというか。そんなことを考えてるから、人とどうも慣れ合うのが不得意なのだろう。無駄に、駆け引きがあるというかまあそれが人らしさを作ってしまうと言えばそれまでなんだが。

「ほら、流石に喫茶店入った後だからなんか、店選び困るよね?」

「いや、帰るけど?」

「は?」

まあ、冗談だと流石に伝わるだろうと思って顔を見るが、若干悲しそうな顔をしていることが伝わってくる。いや、えー。

「なんてね。びっくりした?」

流石に、心配を返して欲しいと思った。ベロを出す姿は、何かしらのアルバムの表紙にありそうだなと思った。まあ、しばらくこいつのわがままに付き合ってあげないとなと思いんがら、仕方なくついていくことにした。

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