第8話

元々、人と話すのはそんな好きじゃなかった。文字媒体でさえあまり好きではない。SNSなんて適当なニュース記事フォローしているだけでし、友達とのつながりをとどめておくためにも何となく作っただけだった。

それに比べ目の前にいるこいつは違う。毎日楽しそうに日々の出来事を世界に向けて発信し垂れ流すのでは飽き足らず、こうやってキラキラとした目で目の前のやつと楽しそうに話すのだ。はっきり言ってしまうと嫌いな人種だ。

「何なんだろうなこの格差」

「え、なんか言った?」

「いや。」

特に格差を感じてるわけでもない。だって、生きてる世界が違うのだから。猫と犬が足の速さで競わないのと一緒だ。俺らは別の人種みたいなもんだ。だけど、なんか、そういう「格差」という言葉が社会的には当てはめられそうだなと感じながらいつの間にか口から出てきていた。

「まあさ?そんな暗い顔せずに行こうよ。確かに、遅刻した上に無茶振りまでして面白いこと言わせた件は悪かったって。」

そう、こういうところだ。こういうところがなぜか許せるから、なんだかんだ会っている。昔、子供向けアニメで同じことをしても許される人と許されない人がいて、許されるようになる薬飲むみたいな話があったっけ。あの青い狸の仕事はすごいもんだと何となく思い出すと不覚にも笑ってしまった。軽く声が出たのだろう。

「何〜、バカにして笑ってんの?」

「いやお前じゃない」

「うっそだ〜」

そんなやりとりをしているうちにお互い手元にあったコーヒーは空になっていた。目の前のでかいパンケーキも消失していた。

「じゃ、行こっかね。」

目の前のやつはそそくさとレジに行った。

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