第4話

フードのポケットでスマホが振動した。手もそこに突っ込んでいたので思わずびっくりする。

「寝てたのか」

唇を少し開け誰にも聞こえない独り言をいう。

目の前を見るとさっきの子供は消えていた。しかし電光掲示板を見てサーっと背中に何かが走る。目的場所まであと一駅だった。

眼が一気にさえる。まだ、運が良かった方だと納得しながら停車した駅のホームに目をやる。圧倒的人の数。酔いそうだ。

少し右下に目をそらすと、意味もなく立ち上がった。そして反対側の扉が次は空くことを覚えているので、今開いていない方の扉に向かう。そしてそこを背もたれにして立つ。

なぜ起きたのかを思い出して、スマホを見る。そこには予定先の友達から

「ごめん、1時間遅れる!!一緒に飯って言ってたけどお茶にしない?先飯食っていてくれていいから。」

詭弁だなと思う。飯食っていていいからというのは言い方としては、優しいように聞こえる。ただ、それは相手が1時間待ってくれるといった前提のもとその新たな提案をしてあげているというものだ。じゃあ、自分ならどういうのだろうか。そもそも、遅刻しない自分の性格もあって、何も思いつかない。

予定の1時間前にはついてしまう正確。つまり、2時間つぶさなければならない。

寝過ごしてみるのもありだったのかもな。そう一人で思った。

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