第3話
「さて・・・と。」
だれも、聞いているわけではない。しかし、言わなければならない。そうしなければ、体は言うことを聞かないのだから。
どうにか、上半身を起こし先ほどから無視し続けてきた携帯のアラームのスヌーズを停止する。慣れてしまえば、起きるために選んでいた不快だったはずの音も環境音に成り下がって意味をなさなくなる。
スマホを手に持ちポケットに滑り込ませる。そういえば、昨日の夜帰ってからそのままだったっけ?まあいいや。とりあえず脱ぎ捨てたジャンパーを羽織ると部屋のドアを開けた。寒い風が体をなぞって吹き込んでくる。そのまま、靴を履いてドアから出てアパートの階段を下りた。
「あ~、寒い。」
そこまで、冷えているわけでもないが、何かを口の中で行っていないと落ち着かないような感覚があり、適当な独り言を話す。
ホットカーペットの電源をつけっぱなしにしていたことを思い出したときには電車に乗り込んでいた。しかし、待ち合わせに間に合わなくなる方が嫌なのでネットで調べ始める。
「ホットカーペット つけっぱなし 火事の危険」
検索バーに打ち込み、調べてみる。
火事の危険を示す記事と、火事の危険はないとする記事が混在している。
焦るようにして、様々なページを見て戻るを繰り返す。やっと自分の中で信頼できそうな火事の危険がない記事を読んで、自分の心を落ち着けて目をつむった。
これで、火事の危険性があれば自分は戻っていたのだろうか、いやそんなことはない。また、安全だと安心できる記事を探し続けているんだろうなと思う。
「まるで、マスメディアだな」心の中で自分を嘲笑した。
安心したら曲を聞きたくなった。ポケットで絡まっているイヤホンをほどこうと試みる。試行錯誤していると向かい席の小学生と目が合った。気まずい・・・
何ともなかったように、イヤホンを元にポケットに戻し眠くもないのに目をつむった。半目で、あの小学生が去っていくのを確認するとしよう。
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