第百七話 空中機動強襲作戦

『――こちら南部戦線司令官トモメ・コウズケ、南部戦線に所属する全ての探索者へ伝達。

 これより我々は北部戦線の人類同盟を攻撃中である敵大型機動要塞の1基に対し、空挺強襲を仕掛ける。

 これは戦線崩壊の危機に瀕する同胞を救う戦いだ。

 これがこのダンジョンでの最後の大きな戦いとなる。

 各員の奮戦に期待する』


『――戦線北部に展開する各員へ、前線司令部のホモゲイスだ。

 これより日仏連合が敵大型機動要塞の片割れを強襲する。

 それに伴い、我々は残ったもう1基の大型機動要塞へ全軍による攻勢を行う。

 これに失敗すれば我々は全ての前線基地を失い、戦線は崩壊する。

 だが、成功すればこのダンジョンでの戦いは終わる。

 これは決戦だ。

 総員、死力を尽くせ』



国際標準時 西暦2045年9月7日10時00分

高度魔法世界第4層

北部戦線 日仏連合 空中機動戦闘団



 200機近いヘリコプターで構成された一団が地上から100m足らずの超低高度を舐めるように移動する。

 その行き先は全長800m全幅250m全高200mという巨躯を誇る黒鉄の要塞。

 全身を大小様々な砲兵器で着飾って鉄と硝煙を振り撒く異形の貴婦人は、煩わしい羽虫の一団にその怒りの吐息を吹きかけた。


「敵大型機動要塞、対空砲撃を開始しました!!」


 恐怖に喉を引きつらせながらも、絶叫じみた戦況報告が日本製UH-3多目的ヘリコプターの機内に響き渡る。

 その報告を聞くまでもなく、各機に搭乗する空中機動戦闘団の面々は、大型機動要塞に搭載された50口径40cm3連装砲8基24門、65口径15.5cm3連装砲8基24門、55口径12.7cm連装砲48基96門が盛大に砲火を放つ光景を目にしていることだろう。

 旧式の火砲と同程度な魔道砲とはいえ、144門の対空砲火は探索者達の心胆を寒からしめるには十分過ぎる威力だ。

 何も対処しないまま闇雲に突撃を続けていれば、その夥しい火力によって幾らかのヘリが堕ちてしまうことだろう。

 人類最大勢力である人類同盟の防衛線を真正面から蹂躙せしめた戦力は伊達ではない。

 しかし、この戦闘団を率いているのは、人類屈指の戦術指揮能力を持つ上野群馬だ。

 彼がこの程度の迎撃を想定していないはずがない。


『Aegis《アイギス》!』


 戦闘団の前面空域に突如出現した光の盾。

 シャルロット公女の保有する特典『これで完璧! 次元間紛争介入裁定 完全攻略ガイドブック』に備わる防御魔術。

 あらゆる攻撃的干渉を遮断する神聖不可侵な盾は、連続して放たれる魔道砲弾の直撃をいとも容易く防ぎきる。

 しかし、彼らの進撃を阻むものは対空砲火だけではない。

 その程度ならば、人類同盟は大型機動要塞の蹂躙を許さない。

 1000両を超える無人戦車の集中砲火を跳ね返し、1000門を超える野戦重砲の効力射を防ぎ切り、1000機を超える航空機の絨毯爆撃を耐え抜いた強靭な魔道障壁は、戦闘開始2日が経過しているにもかかわらず未だ健在。

 小手先の戦術ではどうにもならない厚い壁が、要塞攻略を目指す戦闘団の前に立ち塞がる。


「33式極超音速誘導弾、着弾!」


 しかし、上野群馬にとって、その壁は過去の戦場で既に突破していたものに過ぎない。

 戦闘団の遥か後方を飛行するAC-4G、従者ロボによって操縦されたその巨躯から放たれた8本の極超音速誘導弾は、末期世界第4層の空中要塞攻略戦の焼き増しをするかのように、機動要塞が誇る魔道障壁を突き破った。

 

「敵大型機動要塞脚部に直撃!」


 1脚が大規模高層ビル並みの大きさを持つ巨大な脚部に、8本の誘導弾がM《マッハ》20を超える速度で突き刺さり、内部に搭載された450kgの高性能爆薬を炸裂させる。

 ぶ厚い魔道障壁は見事に貫通されていたが、たかだか直径数mの穴が8個空いた程度では魔道障壁全体が崩壊することはない。


「16脚中8脚が稼働を停止」


 如何な多脚といえども半分近い脚が失われてしまえば堪ったものではなかった。

 絶えず全身を続けていた大型機動要塞の歩みが遂に止まる。

 そして、それは追撃のまたとないチャンスだ。


「第7無人爆撃中隊、爆撃開始」


 航空で機を伺っていた12機のUB-1無人爆撃機が、それぞれ1発ずつ腹の中に抱えていた爆弾を投下した。

 投下された12発の27式地中貫通爆弾、極東の斧、Axe of Far East、通称AFE《アフェ》は、点火したブースターにより加速しながら目標突入最終速度のM12に到達する。

 超音速誘導弾と比べるとその運動エネルギーは小さいものの、AFEは先ほどの障壁貫通によって強度が低下していた魔道障壁を見事に貫通した。

 

「敵大型機動要塞、アフェりました!」


 魔道障壁を貫通したAFEは、そのままの勢いで大型機動要塞の最上甲板50mm主甲板220mm合計270mmの水平装甲を叩き割る。

 当たり所が悪く全ての装甲を貫通して大地に突き刺さった4発を除いた8発のAFEが、大型機動要塞内部でそれぞれに搭載された100kgの高性能爆薬を点火した。


「げへへ、アフェ顔晒してやがる」


 大型機動要塞の各所から爆炎が噴き出す。

 とりわけ要塞後部の資材搬入口からの盛大な吹き飛沫は、今にもアフェェェェと叫んでしまいそうなほどの吹きっぷりだ。

 超音速誘導弾の直撃を免れた残り8本の脚部も衝撃でガクブルに震えている。


「敵大型機動要塞、魔道障壁の崩壊を確認!!」


 そして最大の難関だった魔道障壁が消滅する。


「戦闘団各機に通達!

 全機突撃せよ!!!」



 国際標準時 西暦2045年9月7日10時11分、南部戦線所属探索者137名及び従者ロボ18体、敵大型機動要塞へのヘリボーンに成功。

 損害、未だ皆無。



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