第九十二話 同盟軍VSガンニョム
国際標準時 西暦2045年9月5日16時55分
高度魔法世界第4層
北部戦線
人類同盟 大韓民国
ドドドドドドドゥゥゥゥゥゥンンッッッ
『ガアアアァァァァァァァァ』
数多の攻撃に晒されながらも敵のガンニョムが雄叫びを上げ、銃砲爆撃の全てを未知の高度技術による常識外れの耐久力で払いのける。
あまつさえ力任せに弾幕を突破して、退避の遅れた無人戦車を巨大なシールドで薙ぎ払ってしまった。
「……ッ!?
大したものだなっ!」
アイスランドの男性探索者ビョルン・エリアソンが、腕の一振りで十数tの無人戦車がボールのように吹き飛ぶ光景を見て、驚愕と感嘆が
人類同盟軍の優勢な戦力を活かした全面攻城突撃からの分断作戦により、敵ガンニョムの1体を孤立させ、包囲することに成功した。
しかし、それでも未知の高度技術の塊である敵ガンニョムの脅威は、人類にとって決して侮れるものではなかった。
この戦域には大型地上攻撃機6機、無人攻撃ヘリ48機、無人爆撃機36機、無人戦車216両、無人自走砲72門、各種支援車両436両という、一戦域に投入するには行き過ぎた戦力が集中している。
それにもかかわらず、敵ガンニョムの度重なる砲火で薄汚れた装甲には、目立った損傷は認められない。
「異世界のガンニョムは化物かっ!?」
第2層でゴブリン剣士に痛めつけられ、第3層では機械兵にタコ殴りにされていた味方のガンニョムと比べ、見事なタフネスを見せつける敵のガンニョムをビョルンが化物と呼んだ。
「化物だろうと、私達の任務に変わりはありません。
あのガンニョムを鹵獲します!」
人類同盟指導者エデルトルート・ヴァルブルクから直々に指示された任務、それは敵ガンニョムの鹵獲。
同盟はこの戦線に展開している4体の敵ガンニョム全てを鹵獲しようとしている。
エデルトルートはそれを実現するために、この戦線に同盟の主力を集中させ、敵の前線基地攻略すらも同時に達成を見込んでいた。
「ユナ、そうは言っても、アレの相手は中々に骨だぞ」
ビョルンの言葉の合間にも、戦車砲を顔面に叩き込まれたガンニョムが、爆炎を突き破って無傷の頭部を現していた。
駄目だ。
分かっていたことだけど、手持ちの通常兵力では有効打足りえない。
無人戦車の105mm無反動砲や戦闘ヘリの対戦車ロケットは威力不足。
自走砲の155mm榴弾や爆撃機による空爆は、弾着までの時間で着弾地点を予測されて回避されるか、手に持つシールドで防がれてしまう。
「このまま戦っていたら逃げられてしまいそうですね。
仕方がありません、白兵戦へ移行しましょう」
「やはりそうなるか……」
本来のプランは通常兵器である程度の損害を与えてから白兵戦、戦闘系探索者達による直接戦闘へ移行する予定だった。
しかし、敵ガンニョムは未だに大した損害を負った様子もなく、ジリジリと包囲を抜けるべく移動を続けている。
更には時折、こちらの不意を突く形で反撃すら行っていた。
アレの相手を通常兵器で行うには、国際連合御自慢の第四世代主力戦車群か、噂に聞くトモメ・コウズケ並みの戦術手腕が必要だ。
どちらも今の私達には足りない。
「祖国のため、地球人類のため、覚悟を決めましょう」
この戦域に配置された24名の探索者達が、部隊長である私の言葉に呼応して、それぞれの武器を構えて戦闘態勢に移る。
私も自身のスキル『身体強化(生)』『身体強化(魔)』『身体強化(気)』を同時に発動した。
HP、MP、SP、私の命を繋ぐ何かが徐々に抜け落ちる感覚と共に、自身の肉体が際限なく強化され全能感が全身を支配する。
人の枠を超越して強化された五感は、拡張された脳の処理能力で適切な情報として整理され、世界を覆っていたベールが開かれ、透明になった。
「通常兵器による120秒間の全力射撃の後、強襲します」
私の言葉を受けたビョルンがこの戦域の無人兵器へ指示コマンドを送ると、一瞬だけ砲火が途絶えて静寂が訪れた後、全ての無人兵器が一斉に砲火を解き放った。
全方位からの際限なき銃砲爆撃に、さしものガンニョムも足を止めて防御に徹しざるをえない。
「残り時間80秒」
ビョルンが残り時間を告げる。
探索者を乗せた装甲輸送車が、エンジン音を唸らせて敵ガンニョムへと距離を詰める。
「残り時間40秒」
爆撃機が腹に抱えた爆弾を全て投下したため、ガンニョムが周囲の地面ごと爆炎に覆い隠される。
しかし無人装甲車両はそれすらお構いなしに爆炎へ向けて次々と砲弾を浴びせていく。
「残り時間20秒」
どす黒い煙幕から姿を現したガンニョムが、近場で横転していた無人戦車の残骸を掴んで、自身を攻撃していた攻撃ヘリに向けて思い切り投げ飛ばす。
遠距離攻撃手段のないガンニョムに侮り、距離を詰めて機関砲を撃ち続けていたヘリが、投げ飛ばされた戦車の残骸を避けきれないまま直撃し、空中分解しながら墜落していった。
「全力射撃、終了」
敵ガンニョムの行動を制限していた無人兵器による弾幕がパタリと途絶える。
私達と敵ガンニョムとの距離は、もはや敵ガンニョムの装甲の汚れをはっきり識別できるほどまでに縮まっていた。
あちらも私達の存在に気付いたのか、周囲を旋回する無人機群を警戒しつつも、こちらへ身体を向けた。
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