第八十一話 日中韓集結!!
「
ピンクのキノコヘアーというツネサブローを彷彿とさせる衝撃的な髪型以外は、モデルや俳優のように整った見た目の男が、声をかけたこちらを見るなり表情を険しく歪ませた。
おいおい、この映像って日本全国に生中継中だし、今の発言は普通に国際問題じゃない?
まあ、こんなところで事を荒立てる気はないけどさ。
「不穏な声が聞こえたから来てみたけれど、お邪魔だったかな?」
聞こえてきた会話の内容から不穏な気配ではあったけれど、ここは同盟の陣地内なので一応の確認だけはしておく。
「……くっくっく、そうか、そういうことか。
なかなかやってくれるじゃないか?」
「ギナーは助けを求めてる」
勝手に何かを自己解決したらしい彼は置いておくとして、彼に詰問されていたイスラム圏でよく見かけるニカブで目元以外を隠している女性は、明確に助けを求めてきた。
ニカブのせいで顔立ちは分からないが、意志の強そうなくっきりした黄色のアーモンドアイが特徴的な、全身迷彩コーデの一般女性探索者に見える。
聞いていた感じだと、ピンクキノコはこの女性を国際連合の関係者だと思っているようだけど、少なくとも俺は彼女を国際連合の面子の中では見たことがない。
確かに国際連合にはイランやエジプト、シリアなどのイスラム国家が少なくない数で加盟しているけれど、当たり前だが人類同盟にもイスラム国家が同様に所属している。
確かにニカブで目元以外隠しているから不審に思っても仕方ない部分はあるのだが、最初から連合の人間と決めつけるのも暴論だろう。
とは言っても、聞いたところ同盟のイスラム関係者の間では、ニカブは戦場での相互認識に支障があり過ぎるので使用を控えるよう取り決めがあったらしいので、いくら戦場ではないとはいえ、各国の本拠地でもない同盟の司令部施設でニカブを着用している姿を見れば、同盟関係者と考えないのも無理はない。
「先ほどから君はその女性を連合関係者だと疑っているようだけど、俺の知る限り連合でその女性を見たことはないよ。
同盟のイスラム関係者がニカブの着用を控えていることは部外者の俺も知っているけど――」
「――え゛っ――」
「――最初から彼女を対立組織の人間だと決めつけるのは如何なものだろう?
まずはその女性の話を聞いてあげたら――」
「――もういい、俺も暇ではないからな。
これ以上、お前達の茶番に付き合ってやる義理は――」
「――あら、こんなところで何をしてるのかしら?」
俺とピンクキノコが話していると、物陰から人類同盟に属する中華民国の探索者、
その手にはストローが刺さったままのスムージーが入った飲みかけのカップを持っており、彼女が非常にリラックスした状態でお散歩中だったことが見て取れた。
「トモメ・コウズケとハナ・タカミネ、それに
……えーっと…………あー、まあいいでしょう。
キワモノ揃いのあなた達が集まって何を話しているのかしら?」
袁が出会って早々に随分と失礼なことを言ってくれる。
「無識な
ピンクキノコ改め、朴も袁の物言いに相当お冠だ!
俺としては彼の発言が瀬戸際を攻めすぎてビクビクせざるを得ないぜ!
「ギナーの知名度……」
そしてニカブ女性が地味に落ち込んでいる。
一人だけ名前を呼ばれなかったからな。
袁も分からないとなると、いよいよ同盟関係者ではなさそうだけど、どこの人なんだろう?
「別に話なんて大層なものじゃない。
彼らのもめごとに君と同じで首を突っ込んでしまっただけさ」
「嘘おっしゃい、ケチで狭量な国際非協調主義者のあなたがそんなお人好しみたいなことするわけないじゃない。
今度はどんな即物的な利益に浅ましく飛びついたの?
言ってごらんなさい」
「プホォッ!」
おいおい、公女もそうだけどお前らは俺をどんな目で見ているんだ?
というか袁には色々やっているとはいえ、俺のこと嫌い過ぎじゃん。
それに朴も噴き出しながら笑うんじゃない。
さっきまでの冷淡な振舞が台無しだぞ。
「くっくっく、随分嫌われてるな?」
「自覚がないようだけれど、あなたもかなり嫌厭されてるわよ。
自分が周りから浮いていることに気付いてないのかしら?
哀れな道化だこと」
やっぱり最初の朴のお冠発言はしっかりと袁の耳に届いていたらしい。
言葉の火の玉ストレートが、俺を面白がっていた朴の顔面に叩き込まれた。
ヒューッ!
「……!!!
哀れなのはお前だっ、敗戦国の分際で!
お前、陰でえげつないくらい叩かれてるからな!!
特に女から!!!」
「んなっ……!?
中華民国は負けてなんかない!
共産党から独立したのよ!!
覚えておきなさい!」
「……ギナー、もう帰っても良いかな」
俺も拠点に帰りたい。
だんだんとヒートアップしていく袁と朴を見ながら、心の底からそう思った。
日中韓が集まって何やってんだろう……
これ、俺が仲裁しなきゃダメなのかな?
「ヘイヘーイ、また会っちゃいましたねー?」
「はぅ!?
今は、ただのっ、護衛依頼中なのでっ……勘弁してくださいっ……!」
仕事中のシウムを締めている高嶺嬢を見て、俺は不意に胃の痛みを感じ始めた。
「そもそも俺は嫌われてない!
人間味の感じられない人形みたいに整った見た目でクールな雰囲気を纏っているから、男女問わず近寄りがたいだけだ!!」
「うわぁ……!!
それ自分で言うの!?
そのイカれたプライドの高さがキモいのよ!!
あと私、普通に女友達いますから!」
「……ギナー、もう関係ないよね?」
さて、どちらから仲裁しようか……
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