第七十九話 親同盟諸国
「久々に末期世界第3層で共に戦った面々が集うというのも感慨深いですが、ここに親同盟諸国も加わるとなると、同盟の意図もはっきり見えてきますわね……」
いつの間にか俺の対面に座っている公女が、再びこちらの意図を窺うように目配せをしてきた。
親同盟諸国か。
まーた、あまり触れたくない話題を投げてくれちゃって……
「親同盟諸国…… 人類同盟寄りの立場でありながら、同盟に所属を決めることなく、あくまでも旗色を明確にしない国々。
旗色を決めかねていると一言でまとめるのは簡単ですが、彼の国々の中でもいくつかの国は別の意図がありそうですわね?」
本当は色々と察してる癖に、公女は俺からの説明を求めているようだ。
だけど、それを俺の口から説明しちゃうと不味いことになりそうなんだよね。
もしかしてこの女、俺を小身の日仏連合ではなく、同盟と連合に並ぶ一大派閥の長にしたいのか?
親同盟諸国として一派閥を築いている彼らだが、そのほとんどは地域覇権国家日本の影響圏内にある国々だ。
列強クラスこそいないけれど、台湾、オーストラリア、インドネシアなどのGDP1兆$超えの大国が、親同盟諸国なんて名目で旗色を明確にしていないなんて、人類同盟にとって看過できない問題だろう。
ぶっちゃけ、本当だったら歴史的にも政治信条的にも経済的にも国際関係的にも、人類同盟に所属しているはずの西側第2の大国である日本。
そんな日本が日仏同盟とかいう独自勢力を作り出して、ゴーイングマイウェイしちゃってることこそ、彼らが旗色を明確にできていない主因である。
要は彼の国々にとって盟主である日本が同盟に参加していない以上、彼らは同盟に正式加入しない。
しかし、通常の流れならば日本の立ち位置は人類同盟の主要国なので、それを考慮して日本の本来の立場を補完するために親同盟諸国として同盟の支援を行っているということだ。
もしも日仏が素直になって同盟に加入した場合、そんな彼らも雪崩を打って同盟に加入するだろうし、そうなったら同盟の覇権は絶対的なものになる。
戦後秩序は確定し、第四次大戦も秩序が確定してしまったら起こることはないだろう。
つまり何が起こるか?
話し合いによる
ク ソ 食 ら え !!!
日 本 は 一 人 勝 ち し た い ん だ よ !!!
もし日本が親同盟諸国の内情を認識していると発言してしまえば、彼らはこれ幸いと日本の下に集ってしまい、以降は日本に従うとか公言しかねない。
今は日本が親同盟諸国の内情に気づいておらず、親同盟諸国も勝手に日本の政治的フォローを行っているというスタンスだからこそ、日本のゴーイングマイウェイが許されているのだ。
だけど彼らをまるまる抱えこむことになれば、当然だが彼らを養う義務が発生する。
こう言っちゃなんだが、日本の地域覇権影響国は数が多いし、GDPも可愛くない額が揃っている。
彼らが集まると、その合計GDPはフランスやドイツを軽く超える。
複数国家であるゆえの生産効率の低さを考えると、必要な魔石量が日産1000個ほど加算されることになるだろう。
なんとかなりそうだけど、今はちょっとキツイかな……
ダンジョンの階層が増えるたびに敵の質や量も増えて、魔石の獲得量も増えていくので、だいたい6層くらいになったら声かけようかなって思っているのだ。
今はまだ早い。
「……言っている意味が分からないな。
そんなことより、何か口寂しくないか?
奢るよ?」
「……言っている意味が分からないな。
そんなことより、何か口寂しくないか?
奢るよ?」
グンマはそう言って、ペットボトルに入った炭酸水を差し出してくる。
妾は知っている。
これ、同盟施設内にある自動販売機で売ってたやつだ。
お金を投入する必要はなく、利用者は誰もが無料で好きなものを手に入れることができたはず。
しかも購入してから少し時間が経っていそうだから、炭酸水なのに温くなっていそう。
そもそも、妾の質問、誤魔化されているし……
「……ありがたくいただきますわ」
ペットボトルの蓋を開けると、結構な勢いで炭酸ガスが漏れる。
礼儀として一口飲めば、絶妙に炭酸が抜けている微炭酸のぬるま湯が喉をヌルリと通り抜けた。
「やはり話していると喉が渇きますわね。
おかげさまで喉を潤すことができました」
誤魔化すためとはいえ、グンマが行為で出してくれたものに文句をつけるなんてできませんわ……
ですが、エデルトルートも難しい立場ですわね。
彼女としては親同盟諸国が正式に加入しないとはいえ、同盟の支援を行っている現状は悪くない状況でしょう。
それなのにわざわざ日本と無理やり引き合わせて波風を立たせ、万が一、親同盟諸国が明確に日本陣営として鞍替えしてしまえば、同盟は有力な支援勢力を失うことになる。
そうなってはエデルトルートにとって大きな失点となり、彼女から同盟の指導的立ち位置を奪いたい者達にとって、目的に向かい大きく歩を進めることになるでしょう。
現状、彼女以上に良識的で能力のある指導者が同盟にいるとは思えませんが……
グンマも今回は同盟内部の派閥争いに巻き込まれた形となりましたが、いつまでも責任からのらりくらりとはいきませんわよ?
妾に対しても巨額のODAで援助をしている割には、明確に勢力下へ置こうとしませんし……
いい加減に腹を括れば、もっと頼りがいも出てくるでしょうに……!
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