第七十七話 高度魔法世界第4層 現状説明

国際標準時 西暦2045年8月30日9時30分

高度魔法世界第4層

人類側根拠地 人類同盟司令部施設 大会議室


 人類同盟が高度魔法世界第4層に築いた司令部施設は、やたらと見覚えのある仮設用コンテナの集合体だった。

 高度魔法世界第3層で使用していたものを使い回しているのだろう。

 前回は良く同盟司令部内をウロウロしていたから、俺にとっては最早勝手知ったる他人の司令部施設だ。

 エデルトルートは俺達を司令部内の大会議室に案内して、今後の説明を始めるつもりのようだ。

 俺が席に座ると両隣を高嶺嬢と白影が即座に固め、後ろの席には公女を始めとする自由独立国家共同戦線、自由アジア諸国共同体、島嶼諸国連合の面々が座った。

 これって公女が俺の傘下だと誤解されるから、やめて欲しいんだけど!

 特に公女、頼むから俺の真後ろの席に、手下感醸し出しながら座らないでくれないかな?


「さて、まずこのダンジョンの現状を説明しよう。

 これを見て欲しい」


 エデルトルートが手元のタブレットを操作すると、会議室の正面にある大型モニターに戦域図が映し出された。


https://img1.mitemin.net/e5/rx/l20amqsgi8d87927e4n8jd8jdx8_18ob_1d1_16t_8wm9.jpg


「これは航空偵察の結果を分析して作成したこのダンジョンの戦域図だ。

 現在、我々人類同盟は24個無人機甲連隊を前線に展開し、南部戦線では協力関係にある親同盟諸国が5個連隊、アフリカ連合と新興独立国家協定が共同で2個連隊を展開している」


 そう言ってエデルトルートが色分けされた展開戦力をそれぞれ説明していく。

 見たところ、北部と南部で敵の戦線を押し込んでいるようだが、河川を利用した防衛線を抜けずにそこで戦線が膠着してしまっているようだ。

 北部戦線は同盟の展開戦力が厚く、戦略原潜やガンニョム、強化装甲が集中的に配置されていることから、エデルトルートはここを主力として見ているのか。

 それに引き換え南部戦線は同盟本隊と比べて、装備が充実してなさそうな親同盟諸国とアフリカ連合、新興独立国家協定が担当しているけれど、寡兵かへいながら意外と奮闘しているな。

 久しぶりにイロコイ連邦のインディアン野郎、タタンカに会いたくなってきたぜ……

 中央戦線は河川により大規模な戦力が展開できないまま、敵の頑強な抵抗にあっているみたいだ。

 同盟としてもそこそこの戦力を配置しているものの、北部ほどには力を入れているようには見受けられない。


「一方の敵、高度魔法世界側はこの階層に6個師団30個連隊の戦力を展開している。

 その内、1個師団5個連隊は敵本拠地周辺に配置されており、我々はこの師団が敵本拠地の守備と戦略予備を兼ねているものと考えている。

 また、敵防衛線内各所にて高度魔法世界側のガンニョムらしき機影も複数確認された。

 奴らは2機で1個小隊を形成しており、9個小隊18機の存在を確認済みだ。

 敵ガンニョムは戦場で特に警戒すべき存在になるだろう」


 どうやらこの階層から敵ガンニョムは2機ペアで徘徊するようになったらしい。

 人類側のガンニョムが1体なのを良いことに、確実に殺りに来てやがる……!

 ただでさえガンニョム1体でひぃひぃ言っていたのに、それが常に2体同時だなんて、殺意高過ぎじゃない?

 というか、同盟主力の北部戦線はともかく、碌な戦力が配置されていない南部戦線は良くぞ戦線をここまで押し込めたな!

 戦線を押し込んだということは、少なくとも1回は敵ガンニョムのペアを撤退に追いやれたということになる。

 砲爆撃の物量で力攻めなんてできる訳もないし、☆彡魔法少女☆彡サバンナ☆ブラザーズの戦力は予想以上に高いのかもしれない。

 

「現時点で戦線は膠着状態にある。

 そこで、我々人類同盟は新たにこの戦場に加わった同胞諸君に提案したい。

 国際連合と日仏連合でそれぞれ中央と南部の戦線を受け持って欲しい。

 この提案が受け入れられるのなら、人類同盟は北部戦線を担当とさせてもらう」

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