第七十一話 空中要塞大炎上

『馬鹿な……

 この私が、そんな……!?』


 人型を模していた巨大な竜巻、末期世界第4層ダンジョンボス風神が、神である自身が打倒されたという現実を受け入れられず、酸っぱい臭いを残したまま崩壊していく。

 頭上から吐瀉物と共に襲い掛かった高嶺嬢により余すところなく細切れにされた風神は、実態を保つだけの力を失って徐々に大気へと溶け込んでいった。


「へぃへーぃ……」


 心なしかいつもより元気のない高嶺嬢が、消失に抗って現世に留まらんとする風神へ身体を向ける。



――――――――――――――――


 世界に刹那の空白が生じる。


 彼女の手に持つKATANAが振り下ろされていた。

 崩壊していく風神の身体が縦一文字に両断されていた。


 世界に生じた空白が閉じる。


 世界は過程を辿ることなく齎された事象のみが刻まれた。


―――――――――――――――――



『ォォォォォォ……』


 脳裏に響いた微風そよかぜのような断末魔を最後に、風神はその身を一気に蒸散させて完全に消え去った。

 後に残るは信仰する主を失った敗残兵の群れと半壊状態の空中要塞のみ。

 高嶺嬢が攻撃機から投下され、そのまま自然落下に任せた僅か一交差、ほんの数秒程度の間で起こった神殺し。

 それまで決死の想いで抗戦していた天使と戦乙女達が、あまりにも常識から逸脱した事象を目にして時が止まったかのように硬直している。

 次の瞬間――


「カトンジチュオォォォォロロロロロロロッッッ!!」


 精神瓦解に陥りかけていた彼らは地面を舐めるように広がった灼熱の津波に飲み込まれ、生存本能による原始的抵抗すら許されないまま数瞬とかからずに骨も残さず焼き尽くされていった。

 白影を中心に同心円状で空中要塞地表部を侵食していく業火の大海嘯は、空中要塞の地下構造部にも流れ込み、空中で難を逃れた者以外の悉くを焼き尽くす。

 

「へぃへーぃ、こっちにまで飛ばさないでくださいよぉー……」


 どこか憔悴した様子で立ち尽くしていた高嶺嬢にも灼熱の津波は平等に飲み込まんとするが、心底鬱陶しいというかのように雑な一振りで津波を斬り裂き、自身に降りかかる火の粉を文字通り斬り払う。

 津波は彼女を避けるかのように分かれ、閉じることはない。

 雷撃砲を放っていた要塞砲、火炎弾による弾幕を展開していた対空砲、天使達が立てこもっていた稜堡、地上に展開していた末期世界軍。

 それら全てが、四つん這いになったままの白影が吐き散らかしたカトンジツの津波に飲み込まれる。

 白影がカトンジツを吐き出して10秒足らず、業火の津波は空中要塞の全てを覆い尽くし、咀嚼した。

 偶然、空を飛んでいたことにより、飲み込まれずに済んだ天使と戦乙女達は、自分達の同胞が、要塞が、痕跡が、全てが炎の海に沈んだ光景、地上に顕現した炎熱地獄を呆然と眺めることしかできなかった。

 



『末期世界 において 第4層の解放 が達成されました

 【日本 フランス ルクセンブルク ハッピー・ノルウェー草加帝国……詳細】 が達成しました


 14日間 末期世界 に侵攻することはできません

 【階層制覇 15 】が達成されました 達成者には 特典 が 追加 されます


 レコード は 2555時間12分27秒 です

 【総合評価 S 】を獲得しました 特典 が 追加 されます』


末期世界 第四層 上王の丘タラ・チャン

ロシア 日本 フランス ブラジル ルクセンブルク 中華人民共和国……詳細 攻略完了


『末期世界 は 第五層 が解放されました

 末期世界 は 武装 が解除されます

 末期世界 は 野戦軍 の投入が許可されます』


『特典 を獲得しました

 上野群馬 は スキルポイント 30 を獲得しました

 上野群馬 は ステータス が 向上 しました


 特典 を獲得しました 貢献度 に応じた 特典 が 割り振られます

 上野群馬 に 日本国陸軍 の 貢献度 が移譲されました

 上野群馬 に 日本国空軍 の 貢献度 が移譲されました

 上野群馬 に 美少女 美少年 の 貢献度 が移譲されました


 上野群馬 は スキルポイント 100 を獲得しました

 上野群馬 は 新たな従者 を獲得しました』

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