第七十話 風神を襲う悲劇! 空中要塞陥落まで残り30秒!!
「当機に搭乗する全乗員に告ぐ、全砲門、撃ち方始め」
火を点けろ、なんかとにかく全部に――
ドドドドドドドドドドドドッッッ
全ての搭載火器による一斉射撃により、耳を
それを抑え込もうとすれば、機体にかかる負荷は著しく跳ね上がり最悪は空中分解に至ってしまうだろう。
忘れてはいけない、この機体は構想から僅か2週間でロールアウトされ、大した試験もされてない突貫工事の粋であることを……
だから俺は暴れ狂い機体を内から引き裂こうとする力に敢えて身をゆだね、バラバラの方向へ向かおうとするそれぞれの力に流れを作ってやる。
流れに沿って機体をロールさせ、舞い落ちる木の葉のように空を
速度計は
空中要塞が展開していた魔道障壁を33式極超音速巡航誘導弾の集中投射で突破し、要塞の領域内部への侵入に成功したことにより、天使達が蜂の巣をつついたような騒ぎになっていることが、彼らの頭上から大量の砲弾をばら撒きながらでも感じることができた。
『ぅう、ト、トモメ殿……
拙者、もう降り、たぃ……』
車輪格納庫に詰め込まれている白影から唐突に情けない通信が入ったが……
なんだこいつは舐めてんのか……?
お前にGUNMAの流儀を教えてやる。
泣きを入れたらもう一発、だ!
操縦桿を思い切り引き倒し、宙返りしながらバレルロールを決めてやる。
『トモ、メ、どのぉ……
ト、トモメェェ……!!』
ナニカを押し堪える断末魔を最後に白影からの通信が切れる。
やれやれだぜ!
地上を舐めるように飛ぶことで、超音速飛行で生じるソニックブームにより周囲の天使達を盛大に吹き飛ばす。
ソニックブームで吹き飛ばされた天使の破片が、吹き飛ばされた先に既に移動していた俺のソニックブームで再び吹き飛ばされていくのを横目に見ながら、空中要塞を観察する。
この空中要塞は見たところ直径500mほどの大きさだ。
現在の速度M2.0だと端から端まで2秒もかからない。
つまり最大でも2秒間直進してしまえば、未だ完全には崩壊していない魔道障壁に激突することになる。
自分でも、この限られた空域を敵の砲撃を避けながら超音速で曲芸飛行するのは頭おかしいと思う。
でも、やめられない!
とまらない!
8基の70mm墳進弾発射装置から放たれる合計毎秒16発の墳進弾は、白煙を吐き出しながら33式極超音速巡航誘導弾の集中運用で一直線にズタズタになった神殿群を中にいる天使ごと真っ赤な炎と共に次々と吹き飛ばしていく。
2基の32口径120mm無反動砲が地上へ砲撃するたびに、こちらへ向けて雷のような砲撃をしてくる要塞砲が脆くも崩れ落ちていく。
4基の35mm機関砲と18基の20mm機関砲によるそれぞれ毎秒数千発の機銃掃射は、各所から飛び立つ生き残りの天使達を空中で、地上で、建物越しで真っ赤な羽毛に変えていった。
時折、天使たちに交じってこれまでの戦闘で確認されていた戦乙女らしき個体が、一気呵成に向かってくるも、ソニックブームで吹き飛ばされた挙句、人型の存在に向けるには過剰な重火力の前に無残な挽肉へと変貌を遂げる。
『――ぅぅぅ……!』
高嶺嬢から無線が入ったけど、彼女の唸り声しか聞こえてこない。
昨日も不完全燃焼だったせいか、彼女の唸り声からは満ち溢れんばかりの戦意の鼓動を感じることができる。
彼女には35mm機関砲の1基を担当してもらっているが、ダンジョンボスが出てきたら即座に空中投棄する予定だ。
それまではしばしの間、射的付きの空中遊泳を楽しんでほしいね!
現在の速度はM1.4。
オラッ、景気づけのタイト・ローリング・ループだ!
『ぅうーーー!!!』
高嶺嬢も歓喜の唸り声をあげてくれた。
良かった、喜んでくれたみたいだ!
『オオオオオオオオオォォォォォォォォォ!!!
図に乗ったなっっ!!?
泥人形風情がァァァァァァァァ!!!』
「っ……!」
突然、脳髄に何者かの意思が叩きつけられた。
同時にスナップロールで風の砲撃を避ける。
遂に出てきたか、ダンジョンボス!
「ダンジョンボス出現!
高嶺嬢と白影は直ちに車輪格納庫に待機!!」
無線で呼びかけつつ、こちらへ向けて風の砲撃を猛連射してくる巨大な人型の竜巻を視界に収めた。
見るからに風神って感じだね!
公女が担当する32口径120mm無反動砲が空中要塞に顕現した風神を砲撃するも、一瞬だけ竜巻の一部を削り取っただけで終わる。
「砲撃だと難しいか」
現在の速度はM1.1。
風神を援護しようと魔法を放ってくる戦乙女の大隊を、速度が落ちてだいぶ弱くなったソニックブームで蹴散らしながら、空中要塞の魔道障壁外縁部に待機させておいた無人爆撃機に指示を送る。
十数秒後、要塞直上を12機の無人爆撃機が通過して黒い塊を1発ずつ落としていく。
風神がそれに気づいて風の砲撃で2機を撃墜し、生き残っていた要塞がさらに追加で3機を撃墜したが、既に賽は投げられた。
投下された12発の27式地中貫通爆弾、極東の斧、Axe of Far East、通称
『オオオオオオオオオォォォォォォォ!?
小賢しい真似をしおってぇぇぇぇぇ!!!』
ガチ切れ気味な風神の意思が脳髄をガンガン揺らしてくるが、気にせず風の砲撃や火炎弾による対空砲火をヒラヒラと避け続ける。
AFEの効果は砲撃よりもマシだけど、やっぱり限定的なようだ。
風神の半身を削り取れたが、すぐに新しい竜巻の身体が生えてくる。
どうやら一撃で全身を消し飛ばす必要があるらしい。
現在の速度は時速620km。
もういけるな。
「高嶺嬢、白影、準備は良いかな?」
『ッ……!
ッッ……!!』
いまいち返答に要領を得ない。
まあいい、愉快な遠足の始まりだ!
すっかり遅くなってしまった速度で風神の真上をフライパス。
もう少し工夫したかったけど、対空砲火を避けながらだとこの速度ではこれが限界か。
俺は車輪の展開スイッチを軽快にタッチした!
『ヘイヘェェェゥゥゥヴォォォロロロロ!!!』
『ゥゥゥ、ゥゥ……ゥゥゥゥヴォォォロロロロロロロロロッッッ!!!』
『オオオオオオオォォォォォォォ!!!???
泥人形ォォォォ!!??
風神の念波から心なしか酸っぱい臭いを感じた。
灰かぶりて、我らあり!
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