第四十九話 危険な追加支援の誘い
「—— 連合の攻勢は末期世界軍1個師団による迎撃を受け、前衛拠点を一つ落としたものの1個飛行隊が消え、他の機体も小さくない損傷を被ったようでござる。
どうやら戦乙女と呼ばれる個体で編成された部隊によって、多くの航空機が墜とされたようで……」
末期世界第4層に築いた日仏連合の基地施設。
コンテナと同様の規格でユニット化された構造体、それを組み合わせて形成された画一的な室内。
その中でも司令部として使用されている場所にて、俺は白影からの報告に耳を傾けていた。
室内には俺と彼女の他に、高嶺嬢とシャルロット公女がいた。
脳天気に緑茶を
天使に続いて戦乙女か……
前回は比叡山だったし、色んな神話大系がゴチャ混ぜになってきているな。
天使の中にも翼が4対ある上位種が存在したけど、戦乙女はそれに比べるとどの程度の脅威になるのだろうか。
「我々の現在の航空戦力は戦闘機324機、爆撃機108機。
従来の天使相手なら十分だが……」
末期世界第4層の地形では、陸上戦力が拠点防衛くらいでしか活用できないのが痛いな。
高嶺嬢も空を飛べない以上、今回のダンジョンでは大型ミサイルに括り付けて敵拠点に撃ち込むくらいしかできない。
戦闘の鍵は白影か。
「指揮下の探索者達で空中戦ができる者はいませんわね。
アル姉様とグンマが戦局の要となりますわ……」
アル姉様とグンマ?
「えっ?」
「えっ…… ですから、今回のダンジョンでの戦局はアル姉様とグンマの奮戦に左右されると……」
白影と俺の奮戦?
「えっ?」
俺、バリバリの後方支援タイプだよ?
一応、君達、機械帝国組の総司令官だよ?
「その、グンマが戦闘機を操縦すれば、戦乙女くらいなら簡単に蹴散らせるのではと……」
「えっ、ちょっとちょっと、待って欲しい。
俺は司令官だし、いつも通り後方で指揮に専念しようと思ってるんだけど……!」
何を勘違いしたのかドリルが、自軍の総司令官を最前線に突撃させようとしてる!?
「ええっ、ですが正面戦力が限られている以上、グンマの操縦技能を無駄にするのはあまりにももったいないですわ。
それに前回は操縦しながら戦術指揮も出来ていましたし……」
「シャルよ、あまり我が主君を苛めるでない。
トモメ殿は操縦の腕こそ伝説の域だが、射撃に関しては素人以下なのだ」
見かねた白影がフォローを入れてくれた。
さり気なく俺を貶しているが良しとしよう。
「俺の戦力化については置いておくとして、当面の戦術は白影を中心に考えるしかないだろう」
カトンジツにより空中を音速超えでかっ飛ばし、非装甲標的の
天使や戦乙女が相手でも容易に陣形を突破できるだろう。
その突破口を戦闘機部隊で維持している隙に、敵拠点へ高嶺嬢を撃ち込めさえすれば、敵の戦線を崩すのは容易い。
心配なのは熱耐性のある敵個体の出現だけだ。
忍者オタクの癖にSYURIKENをほとんど活用していない白影は、ダンジョン戦争も第4層になるというのに攻撃法はカトンジツ一辺倒。
弾数無限で魔力障壁に対する貫通属性すら持っているというのに、宝の持ち腐れでしかない。
「うーん、前回のダンジョン攻略で追加された妾の特典も、航空戦で決定打となるものでもありませんし、それしかないのですわ」
公女は俺の戦力化を諦めきれないのか、未練がましく俺をチラチラ見ながらも渋々納得した。
GDPの半分を超える借金を背負っているからか、公女の敢闘精神が
赤みがかった茶髪を巻いている彼女自慢のドリルも、いつもより攻撃性を増しているようだ。
艶が違うね!
この階層では既存の勢力に加えて、汎アルプス=ヒマラヤ共同体を勢力下に入れることを目指して頑張って欲しいものだ。
各勢力に接触した感じだと、連合所属国以外はまだアレクセイの毒牙には染まりきってはいなさそうだ。
彼の内部統制は大したものだけど、やっぱり特典持ちがいないことは寄り親を探す中小勢力にとって、所属を決める決定打が無いことと同義となる。
その点、公女は自身が特典持ちな上、指導者としての能力も申し分ない。
既にがっちり統制されている連合加盟国を切り崩すのは不可能だろうけど、他を取り込むのは十分に可能。
がーんばれよー。
そうだ、君には手柄を立てさせるためにも前線指揮官の地位をプレゼントしてあげよう!
なあに、遠慮はいらない。
追加のODAで小型の管制機も有償供与してやる。
是非とも鉄火飛び交う前線を楽しんで欲しい!
俺は安全な後方拠点から応援してるぜ!
「ところで公女、追加の支援、欲しくない?」
「嫌な予感がしますわ…… まだシャルと呼んで下さらないの?」
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