第六十三話 ゆるキャラのメシウマ大会議
第三世界諸国は残りの1%852個を67ヵ国で分け合うことになる。
どうせ戦闘中に各国がある程度ネコババしているだろうし、これくらいで丁度良いくらいだろう。
なお俺達チーム日本が戦闘中に隠し集めた魔石は2000個ほどだ。
高嶺嬢の四次元マントは本当に便利ね!
「今日の
高嶺嬢が天麩羅を勧めてくるが、衣をつけて揚げるだけの天麩羅に自信も何もないだろうに。
そう思いながら食べてみれば、口に入れた瞬間、サクッとした歯触りの良い衣の触感とほんのり甘い
鱧は丁寧に骨切りされており、小骨の感触が全くしない。
衣の量、揚げ方、鱧の熱の通し方、大きさ、全てが完璧に計算され尽くした至高の一品。
「高嶺嬢の料理、本当に好き」
「は、はい!」
素直に感想を伝えれば、彼女は花が開いたような笑顔を咲かす。
ここだけ見れば本当にただの女子力高い美少女なんだけどねぇ。
どうしてああなっちゃうんだろうねぇ……
「ト、トモメ!
これも食べてみて!」
今度は白影がござる口調を完全に捨てて、茶色いドロドロした肉料理を勧めてきた。
パッと見て平皿に盛り付けられた汁少なめのビーフシチューにしか見えないけど、匂いは明らかに牛ではない。
彼女の今までの実績から美味しいんだろうけど、口に入れるまでそれが何なのか分からない怖さがフランス料理には稀にある。
「鴨!
鴨料理だから!
ルーアン風!!」
気がはやったのか身を乗り出しつつある白影。
今はいつもの覆面を取っているため、彼女本来の可愛い系美少女フェイスが曝け出されている。
これほどの金髪美少女に手作り料理を食べて欲しいと言われて躊躇できる男がいようか、いや、いまい。
ナイフで切り分けることなく、一切れをそのままフォークに刺して食べてみた。
瞬間、濃厚な
肉汁を余すことなく閉じ込められた肉はふんわり焼き上げられていて、
鴨特有の臭みを消しているにもかかわらず、鴨本来の味が舌を侵食する。
これがフランス料理、誕生以来欧州の各国料理で覇者の地位にあるのは伊達ではない……!
「君の料理を毎日食べていたい」
「え、ええぇぇぇぇぇ!!!?」
思わずこぼれた本心に、白影が驚愕の叫び声を上げた。
同時にどこか次元の壁を幾つも隔てた遠い地で、外堀がまた一つ埋められたのを感じる。
「う、うん、いいよ、トモメェ」
「ちゃんと日替わり交代ですからね!
黒いの、聞いてますか!?」
白影と高嶺嬢が何やら言い争いを始めたが、俺はその隙に彼女達の料理をパクつく。
美味しすぎていちいち感想なんて言ってられないぜ!
「———— 先程から言っているだろう!
自由独立国家共同戦線は中途参戦なのだから、戦功も相応に他より少ないものとなる!」
「だからと言って、この配分はあんまりでしょう!
妾達は自前の装甲車や特典による
せめてその経費分は頂かねばなりません!」
「まて、私達アフリカ連合はただでさえ頭数が多いのだ。
分け前は人数比も考えて決めて貰わなければ困る!」
新興独立国家協定のタタンカと自由独立国家共同戦線の公女、アフリカ連合のモルラハニが未だに魔石の配分についてぐちぐち言い争っている。
いや、言い争っているのは彼ら3人だけじゃない。
末期世界攻略にあたって俺が第三世界諸国を適当に組み分けした結果、彼らは分けられた組織ごとに利権交渉を行っていた。
彼らは日仏とその他の魔石配分比率が決まった後、そのままウチの食堂で会議を続けているのだ。
彼らの前には高嶺嬢と白影がお客さん用として作った簡単な和洋会席が並んでいる。
しかし祖国の命運と期待を背負っている彼らには、料理を食べている余裕がないのかほとんど手を付けられていなかった。
やれやれ、余裕のない連中だぜ!
公女だけは残さずしっかり食べているあたり、こんな時でも彼女と白影の力関係は絶対のようだ。
「島嶼諸国はそこまで活躍していなかったのではないか?」
「何を言うんですか!
そういうアジア諸国は最前列に全く出ていなかったでしょう!!」
「それを言うならラテンアメリカが一番戦っていなかったように思います」
あちこちで不毛な議論を重ねる第三世界諸国。
最早お互いへの非難合戦になっているのが、我が国としてはとても面白い。
このまま第三世界諸国なんてバラバラになってしまえば良いのに。
まあ、バラバラになることは流石に無いだろうが、この調子で行けば日仏対第三世界で推移していた会議の図式を、第三世界内部での対峙に差し替えることができる。
ダンジョン戦争による国境断絶で余裕のない中小国家に、民度の低い国民の目がある中で譲歩なんて出来る訳がない。
きっと会議は拗れに拗れることだろう。
最終的に日本が仲裁に入れば、各国の憎悪を分散できる。
そして日本は最小限の批判で最大限の資源と仲裁役としての各国へのパイプを手に入れることができるんじゃあ!
俺は列強本来の役割である調停役を放り投げ、食事を楽しみながら目の前の小国同士の醜い利権争いを眺めるのだった。
他国の不幸で飯が上手い!!
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