第五十一話 二大国の追課金
「………… う…… うぅぅ」
「………… えぅ…… ふぇぅ」
呻き声をあげながら俺に縋り付いている高嶺嬢と白影。
常とは違う触れれば崩れそうなほどの弱弱しい姿。
花のような香りが鼻孔をくすぐり、俺の身体には女性特有の柔らかい感触が…… 全くしなかった。
それどころか彼女達のつけている手甲や胸甲などでゴツゴツしていて痛い。
白影に胸甲はないが、元々胸甲みたいなものだし大差ない。
どうしてこうなったのかは未だに分からないが、とりあえずミッションにある通り、彼女達を優しく抱きしめて慰めてみるとしよう。
「………… うぅぅん」
「………… えぅぅぅ」
心なしか俺に抱き着く力が増したような気がしないでもない。
視線を下に向けても黒と金の旋毛しか見えないけど、俺の
俺の精神分析スキルはパッシブスキルのため、明確な効果が出ているか分かりにくい。
ただ、なんとなく良い気分になっているような、なっていないような……
なんとなく赤子をあやすように彼女達の背中をポンポン叩きながら、努めて穏やかな口調で話しかける。
「何か辛いことがあったのかい?
大丈夫だよー。
もう大丈夫だよー。」
「………… うぅん」
「………… えぅん」
さて、頭の中が暇になってきたし今後の攻略方針を考えるとしよう。
当初の攻略計画だと第一段階として、まず敵潜伏地帯を自走砲と多連装ロケットによる砲撃で耕す。
その後の第二段階として、機甲戦力を中心に現地第三世界諸国との混合軍を編成、敵残存戦力による抵抗を押し潰しながら階層ボスに対し決戦を挑む予定だった。
砲戦力が俺達の自走砲24門と多連装ロケット24基しかないので、この方針だと多少の時間はかかってしまう。
しかし、これが現状で最も確実かつ最小限の損失、そしてなにより各国の体面を損なわずに階層攻略が可能となる方法だった。
勿論、チーム日本の中核戦力は高嶺嬢と白影の決戦兵器コンビだ。
戦術的局面でこのコンビを投入すれば確実な勝利が約束されている。
だけど二人の様子やミッションコメントを見るに、彼女達には一定期間の休息が必要だろう。
このダンジョン戦争がいつまで続くのか分からない以上、こんなところで無理をして二人を消耗させるなんてのはただの愚行だ。
そうなると、今回の戦闘ではこれまで俺達の快進撃を支えてきた決戦兵器を投入できないことになる。
流石に戦略を変えるほどではないけれど、想定していた戦術は大幅に変えなければならない。
というか、先程の第三世界諸国との会談でやんちゃしちゃったので、末期世界側の動きも変化してくるだろう。
なにせ今まで中小国相手に白兵戦をやってたところに、山一つ吹き飛ばす爆弾を起爆されたのだ。
そりゃあ、あちらの動きも変わるってもんよ!
もしかしたら敵は二度目の大規模爆破を警戒してこちらの拠点に急襲を仕掛けてくる可能性もある。
根拠地への出入り口付近は安全地帯だが、その外部に建設された各国の駐屯基地まで安全が保障されている訳ではないんだ。
そう考えると、戦術の転換でもたつく訳にもいかない。
高嶺嬢達の回復を待つという選択肢もあるにはあるけど、いたずらに時間をかけてしまい機械帝国を攻略し終わった同盟や連合の介入を招くのは駄目だ。
理想を言えば、同盟と連合に介入される前にこのダンジョンの攻略を終え、第三世界諸国への影響力を確立させておきたい。
その為の猶予期間は機械帝国の攻略状況にもよるが、俺達と同時期にあちらへ参戦した同盟の戦力を考えると、もって2週間、最短で1週間と言ったところか。
そんな短期間での攻略が求められる末期世界で俺の影響下にある戦力は、従者ロボ18体、1個機甲旅団と1個戦闘機中隊、それに第三世界諸国の探索者が83名。
うーん、微妙!
弱小国とは言えステータス向上やスキルによって常人以上の戦闘力を持つ探索者と廃課金装備で身を固めた従者ロボがいるので、第3層ダンジョンの攻略が無理とは言わない。
しかし、3個機甲師団と2個航空艦隊で機械帝国に殴り込んだ同盟と比べると、見劣りするのは否めなかった。
まあ、気にしてもしょうがない。
幸い、兵器を揃えるのに浪費して1000億円程度まで目減りしていた資金が、ここに来てからの日仏による国家予算規模のお小遣いで9000億円ほど回復できた。
これで俺は再び課金できるようになる!
俺の脳裏に数々の兵器とその値段が思い浮かぶ。
UF-2無人戦闘機80億円、35式無人多脚戦車、対機甲型6億円、自走砲型7億円、多連装ロケット型8億円。
120㎜APFSDS1発100万円、35㎜機関砲弾1発5万円、155㎜榴弾1発50万円、220㎜収束墳進弾1発1000万円、38式短距離地対空誘導弾1発2000万円。
各兵器の生涯運用費はプライスレス!
もうやるしかねぇ!
出来るか出来ないかじゃない…… やるんだよ!!
「………… うぅぅぅ…… ぐんまちゃんぅ」
「………… えぅぅぅ…… トモメェ」
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