第二十六話 主人公、女を酔わせて責任を取る
「えっ、なに?
さっきのなに?
なんなのあれ」
未だに混乱から立ち直れない俺は、殺りきった感を醸し出している高峰嬢の肩を揺さぶりながら問いただす。
天之時がうんたらかんたら、と言った途端、殺意剥き出しのガンニョムがものの見事に両断されていたのだ。
彼女の
そもそも刃渡り120㎝の刀で、巨大なガンニョムを一太刀で真っ二つに出来る訳がない!
物理的に!!
もう、何なの君!? ビームとか撃っちゃうの!!?
「ひゃわぁ、や、止めてくださいぃ、ぐんまちゃぁぁんぅぅ」
無抵抗で揺さぶられる高峰嬢。
俺の腕をタップすることもせず、どうやら結構疲れているようだ。
その様子に心中の動揺が罪悪感に早変わり!
客観的に見て、一回り以上小柄な少女をガックンガックン揺さぶる男ってどうよ?
「ごめん、それで、あれって何なの?」
動揺が収まったからといって、頭を埋め尽くす疑問が解消されることは無い。
是非とも物理法則を完全に無視したあの攻撃について、詳細な説明を求めたいところだ。
「うぅぅ、ぐんまちゃんに酔わされちゃいましたよぉ……
責任取ってくださぁいぃぃ」
高峰嬢は俺の揺さぶり攻撃が致命的だったらしく、生まれたての小鹿のようにぷるぷる震えながら、俺に体を預けてくる。
数千体のモンスターを容易に蹂躙した彼女が、たかだか刀の一振りでここまで消耗するなんて……
「分かった分かった。
それは良いから、天之時うんぬんについて、説明してくれ」
「………… ふふふ。
『
実家の
いきなり元気になった高峰嬢が、サラッと説明してくれる。
へー、なんとなくで必殺技って使えるようになるんだなー。
まあ、習得した経緯は置いておく。
『
昔とは言え、日本であんな超必殺技が
まあ、本家はあんなとんでも剣な訳ないだろうが。
それにしても、元気になったなら、いつまでも俺にしがみつかないで欲しいんだが。
揺さぶっていた手前、離れろとは言えないし……
しかし、何気に重いので、いい加減離れて欲しいなぁ。
いや、華奢で軽い方だとは思うんだけど、人並み程度の俺の力では、結構疲れるんだよね!
「トモメ殿! 白いのばかり
拙者も頑張ったのに…… 拙者の方が派手だったのに!!」
丁度良いタイミングで、膝をついていた白影が復活を遂げた。
確かに彼女は良く頑張ったよ。
その後の高峰嬢の必殺技がインパクト強すぎて
白影のカトンジツに晒されたガンニョム以降の大地は、未だに赤熱しており、正直言うと洒落にならないくらい暑い。
ガンニョムの魔石なども回収しておきたいが、この熱ではしばらく様子見だろう。
ある程度熱が冷えて、ドロドロに融解している地盤が固まったら、従者ロボに採ってきて貰うか。
「離れるでござるぅ!
トモメ殿から離れるでござるぅぅぅ!
拙者も褒めるでござるぅぅぅぅぅぅ!!」
白影が高峰嬢を引き剥がそうとするも、高峰嬢は俺の体に顔を押し付けてイヤイヤと首を振るだけだ。
微塵も離れる様子はなく、筋力32の強烈な締め付けで、装甲服の装甲板がミシミシと嫌な音を立てだした。
ヤバイ、ヤバいぞ、ヤバすぎる!!
「白影も良くやったな。
あのカトンジツは凄かった…… 本当に。
カトンジツというか、完全に火砕流とか災害レベルのナニカだったな」
視界一面が赤黒い業火で埋め尽くされた光景は、自分に向いていないと分かっていても、恐怖を感じざるを得ないものだった。
おそらく反応兵器を除けば、人類が行使可能な最も威力のある攻撃なのではないだろうか。
「むふふ、そこまで褒められると、照れちゃうでござるよぉ。
拙者の忠義の炎も燃え上がるでござるぅ」
忠義の炎って何だろう?
まあ、いつもの妄想だろう。
俺は擦り寄ってくる白影を、わざと高峰嬢とくっつくように寄せる。
毒には毒を持って制するのが一番だと思うんだ!
「おい、白いの、拙者の番でござる」
白影が高峰嬢を押しこくろうとするも、万力のような力で固定している高峰嬢はビクともしない。
「お主はもう良いでござろう。
そろそろ拙者に譲るでござる!」
無理やり退かそうとする白影に、高峰嬢は俺の胸に顔を押し付け、無言をもって答えとする。
急激に悪化の一途を
宝石のように綺麗な蒼い瞳は完全に座っており、今にもカトンジツ、と叫びそうだ。
流石にやらないとは思うが、この女ならば殺りかねない、と心のどこかで思ってしまう自分がいる。
やばい、これはやばいぞー。
こんな至近距離でやられては、高峰嬢は大丈夫だと思うけど、俺は間違いなく焼死体になるだろう。
それは不味い。
階層制覇直後に仲間割れで死亡とか、あまりにもアホすぎる。
そうこうしている内に、白影がニンニンポーズを構えやがった!
クソ、こうなったら俺にできることは……
「よーしよしよし! よーしよしよし!」
この後、白影を撫でまくる俺の右手は、小1時間ほど火を吹くこととなった。
なお、ガンニョムの魔石と、蒸し焼き状態の地下要塞に保管されていた魔石は、俺が彼女達を
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