第7話 救われてしまった世界



 彼ら二人がコールドスリープについた時は、歌姫が犠牲になる方法以外で、世界を救う方法は存在していなかった。

 けれど、時が流れれば、人の考えも変わる。技術も発展する。


 やがて、世界を救う方法が発見されてしまい、オルタとキャロンは罪を償う機会を奪われてしまった。


 その方法が、誰も犠牲にならない方法ならば、まだ二人は悲しむだけですんだだろう。


 しかし、新たに見つかった方法は、別の犠牲者を永遠に生み出しつづけるものだった。


 事故によって致命傷を受けた私は、自分の意思に反して、周囲の者達によってコールドスリープにかけられ、二人と同じ時代に目覚めた。


 そこで目の当たりにしたのは残酷な現実だった。


 かつて楽聖国家が失敗したプロジェクト。

 精神体アストラルボディで異世界に逃げる方法を応用した鳥籠計画。


 異世界から力をもった精神体を呼び寄せる方法があり、彼等の犠牲が世界平和の礎となっていたのだ。


 ここまでくるのに。オルタやキャロンに言葉をかける事を、躊躇わなければよかった。

 今までならかけられる言葉は無数にあった。

 そうしていれば、きっともっと届けられる気持ちがあっただろう。出来る事もあったはずだ。


 けれど、もう世界があんな風になってしまった原因の一部である私の言葉は届かない。


 救われた世界の中で、罪滅ぼしの機会を失ってうちのめされるキャロンを前にして、今度こそかける言葉を永遠に失ってしまった。


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アーク・ライズS クオン・リューザーの日記 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032

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