終わってからの道の先

数年後


そこは草が生い茂る。


だけどもそれは決して森や荒地などとは言えない程度には保っていた。


そこには蒼白色のロングヘヤーに黄金の瞳を持つまだ幼くも凛々しい少女が嬉々如くも、淡々と呟く。



「先生」


「トリトマ先生」


「ついに解きました、どうですか?」


「うぅ〜ん、いいね!合格だよ〜」


「良くできたね!アロエ!」


1人、そこに神々しくたたずんでいた。


まるで太陽の様に、いつも道を教えてくれたり、せんたくしをくれたり、いつも私達を見てくれる。


だけどもその言葉遣いから、表情からただの少女にしか見えない。


「では、約束通り教えてください。先生の先生について」


「フフッゥン〜」


その笑いはあざ笑うなんてことはなくて、なにかおかしくてつい笑ってしまうような軽い笑いだと思った。


「先生の先生だなんて、おかしいねぇ」


「先生今回こそは誤魔化さないでくださいよ?」


「はいはいわかってるよ〜」


しばらく考えるような表情をするといきなり声をかけてきた。


「じゃぁまず質問だよ。数年前に起きた革命についてどう思う?」


唐突な質問だ。数年前というとやっぱり、


「3年戦争ですか?2年と2ヶ月と10ヶ月で終わったものですよね。」


「そうだよ〜」


そこには少女はいなくなった。


まるで敵意を見定めるように、いつも私たち見習いに試練を与える時の顔だ。


言葉遣いは同じ筈なのに、感じが…オーラが違う。


何度体験しても苦手で慣れない。


「…教科書には、多くの事が書かれていません。最初は先の時代を終わらせた賢王として出てきて、次の瞬間には強欲に、権力に溺れた愚王として出てきます。」


「………」


彼女は目を閉じて聞いている。まるで湖の中にある木に、もたれ掛かり休むように。


「たしかにそうではあるけども、かの王は本当の賢王でした。誰にも思い付かないようなことを瞬きをする間にあらゆる事を変えていきました。」


「しかし、教科書にはその内容が最底辺の事しか書かれていませんでした。」


「まるで誰かが消したように……」


「…かの王が、権力に溺れた事が本当に残念だと思いました。」


彼女は俯いていた。


怖い。


なにを考えているか分からない。


静寂がこの場を支配する。


私の耳に入るのは小鳥のさえずりや川のせせらぎぐらいだ。



しばらく間をもってその静寂は破られた


「正解ー!すごいね!そこら辺の学者ですら知らない事も……」


いつもの笑顔がそこにはあった。


だけども私にはその笑顔は泣いているように感じた。


「まぁここまで来れば分かると思うけど、その愚王が私の先生だよ」


先生は無駄な事はしない。


楽しむ事はあるけども……


予想はし始めていた。


だけどもその言葉に驚きを隠せなかった。


「先生は知り合いだったのですね……」


「うん、幼馴染でもあるよ」


「ほんと驚いたんだよ〜よく愚王が変えてきた事を調べあげたなぁ〜って。」


「いつのまにか出てきたものが、いつ出てきたのか気になる事があったので」


「さっすがぁ〜私の弟子1号君だ〜」


先生はすぐ過大評価する。


やめて欲しいものだ。


「私は最初の弟子じゃありませんよ。」


「でも最優秀な弟子じゃん。」


……そうやって答えにくい事をすぐ言う……


そういう所がトリトマ先生の数少ない悪い所だ。


「そして!そんなアロエ君には特別にいい事を、教えてあげよう!」


その言葉を聞いた途端戦慄した。


先生は悪い嘘はつかない。


先生はいい事と言った。


つまり私の知る内容に……3年戦争の内容が違うというの?


「愚王は権力に溺れたんじゃなくて、溺れるように見せかけたんだよ」


!?……


そう言われると納得はした。


あれほど事をした賢王が権力に溺れるわかがない……


でも溺れる可能性は無いわけじゃない。


確か王になったのは先代達の王に嫌気がさしたからで……まさか、まさかね……


「……さぁ想像はついたかな?」


「そっそうやって国に消されそうな事を教えるんですか!?」


「天才ならいずれ気づくし、時間の問題でしょ?」


「でっでも」


「それに!君は国を築いていく1員なんだからね!これぐらいショートカットしよう!」


あぁぁぁーーー


もうほんとこういう所が嫌いです。


「そして2つ目だ!」


「まだあるんですか⁉︎」


もうお腹いっぱいですよ……


「誰かが消したようにって言ったけど、それ消したの愚王だから」


!?!?!?!?


えっ?


生きてたの?


「たしかに愚王は死んだってされてるけど死体見つかってないよね?」


「そっそれは最後の一撃で城もろとも消えった」


「でも死体見つかってないよね?」


「………………」


「アロマ君が勝手にそう思い込んでただけじゃん」


「誰だってそう思いますよ……」


「所詮アロマ君もまだまだって事だね!」


ムーー


そう言われると腹が立ちます。


ああぁぁもう怒りました決めました!


腹が立った私は先生の手を引っ張り走り出す。


「わぁわぁ ちょっといきなり引っ張らないでよ」


「知りません、さぁ質問は終わりました。」


「さぁ次の試験へ行きますよ!」


「それは私が決める事!」


「関係ありません。」


そう言いつつ森を抜けて、街に帰る。


日が暮れて夕日が綺麗ですね……


お腹も空きました。


さぁ今日は奢ってもらいますよ。


拒否権はあげませんよ‼︎


普通は奢らせるものじゃなくて奢るものでしょ?ですって?


それとこれとは話が別、ってやつです。


それにお金沢山持ってるでしょ?


奢る飯と奢られる飯じゃ味が違う!って?


知りませんよ!大体いつも…………………





先生……


まだまだ知りたい事は沢山あるんですからね。


先生……


付き合ってもらいますよ







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