51話 元の世界
体が重く空気も美味しくない。
きっとここは元の世界であろう。体が重くて動かせない。
うっすらと目を開けるとそこには少し汚れた天井があった。
「おはよう、夢。」
道の声がする。道の方へ顔を動かすと清々しい表情の道が居た。
「ここは?」
「由衣のコテージの中だよ。」
どうやら本当に戻ってきたらしい。
ベッドはフカフカだ。
そうか。私は旅行へ来ていた。そして彼との別れを考えていた。
そこに戻ったのか。
「夢乃さん!起きたんですね。」
由衣さんがこちらに駆け寄ってきた。
大地や美月さんもいて、とても心配をかけたらしい。
寝ていた姿勢をなんとか起き上がり、座った姿勢に運んだ。
「ごめんなさい。私あまり昨日の夜のことを覚えていなくて。何があったか教えてくれない?」
「四宮は昨日突然星を見ながら、そのまま倒れてしまったんだ。そこが結構深い森で道も一緒に落ちてしまった。」
全然知らないことを口で説明する大地。
そういうことになっているのか。
「道は大丈夫なの?」
「うん。平気だよ。」
道は優しい顔をして笑う。
「嘘をつかない。さっきまで夢乃さん同様寝ていたのだから。」
美月さんは怒った様子で言っていた。
「ごめんなさい。私がみんなの楽しみの邪魔をしてしまって。」
話していることが正しければ相当の迷惑をかけたことになる。
「いいえ、私の方が謝りたいの。」
由衣さんは体を前にして話してくれた。
「夢乃さんはご存知ないと思うけれど、私はずっと貴方のことを一方的に知っていたの。九条アイって覚えているかしら?老婆だったのだけど。」
きっと私はこの先を予測できる。
しかししっかり最後まで聞かなくちゃいけない。
きっとノアなら聞いてくれるから。
「覚えているよ。私の隣の家に住んでいたおばあちゃんでとても可愛がってもらった。」
「ええ。その人実は私のひいおばあちゃんなの。私は貴方のことを遠くから見ていて、当時はひいおばあちゃんが怖くて、あなたがとてもすごい人に見えていたの。」
やっぱりそうだったんだ。
「私の家系の2文字の名の人はね、みんな似たような容姿にとても似ている性格を持って生まれてくるの。ひいおばあちゃんの姿が私自身の未来の縮図に見えて、きっと私も1人でベッドから動けなくなってしまうんだって、そう思うととても苦しかった。」
たしかにアイおばあちゃんと由衣の顔はよく似ている。道がそっくりと言っていたのが今なら理解出来る。
「大学生になってね、私は歳をとる実感を理解することが出来た。きっとあっという間に私はひいおばあちゃんのようになる。そこであなたが道の恋人として現れてくれたの。きっとひいおばあちゃんとも仲良くやっていたのだから私ともと思った。それから友達になろうと思って、でも自分から友達を作ったこと無かったから、こんな方法を思い浮かんだの。」
由衣さんは小さく手を震わせていた。
「この旅行をめちゃくちゃにしたのは私なの。私があなたを構ったら美月がどうなるかなんて予想ついたのに。ごめんなさい。」
「ふふ。大丈夫よ。でもそれならそう言ってくれたら良かったのに。」
彼女の不安を取り除くために小さく微笑んだ
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