第37話 気球の上
「さあ、どうぞお入りください。」
とドアを抑えつつ言うノアは、とても様になっていてかっこいい。
「ありがとう、ノア。」
と出来るだけ明るく伝える。
道も同乗し、ノアは自分も入りドアを念入りに閉じた。
気球なんて初めて乗るから、ドキドキしてしまう。
用意された中には頑丈な椅子が強固にくっついており、私たちはシートベルトをさせられた。
バナーの火により膨れ上がた気球は、ゆっくりとポカポカ動いて行った。
ドキドキしてしまう。風に揺れられながらも、ノアが例のごとくヘンテコな魔法を使いつつ、あの星を目指していく。
先ほどした話しを思い出し、道の方を向くと冷静に外の眺めを見ていた。そして誰に向けてでもなくボソリと呟いた。
「これだ。…やっぱり綺麗だな。」
道は遠くずっと見ていた。きっと幼い頃の道もとても遠くをずっとみていたのだろう。
「やはり道くんに聞いて正解だったな。」
とノアは少し満足げに言っていた。
茜色の空は私たちをゆらゆらと照らし、遠くの方から緑の中からひょっこり顔を出した湖。
序盤は誰もが感傷に浸り、黙りこくっていた。
しかし、中盤は突然大きく方角を変えた。
気球が反転したのだ。
やはりノアと移動の相性の悪さを全身から感じてしまう。
茜色から青空に変わる頃には反転されていた。
私も道もきっと腑抜けた顔をしていると思う。
しかしノアは笑い声を出した。
「すまない。2人がここまで怖がるとは思わなかったんだ。」
「凄く怖かった!びっくりしたじゃない。」
「事前に教えてくれよな!死ぬかと思った。」と道も追い討ちをかける。
「本当にすまない。しかし私が同席しているところで、怪我などの心配をすることはない。落ちることもないからどうか許してくれるかい?」
するとノアは瞳を真っ直ぐと見る。
その目と声にはどこまでも弱い。私は怯んでしまう。
「気球とかじゃなくてもっと安全な乗り物とかで良かったんじゃないか?」
「いや、道くんの話を聞いたら、乗せて上げねばならないと思ってしまってね。しかし夢乃と道くんには怖い想いをさせてしまった。あとは着地のみ少しの揺れがあるくらいだから、安心して欲しい。」
道はその言葉に何も返すことはせず、私はノアが少し笑いつつ初めは話していたが、徐々に優しく言ってくれるところにどうでも良くなっていた。
ノアはユーモアのあるところは、確かに私に少しの恐怖を与えているが、実際私の好奇心を刺激させていることは嘘じゃない。
結構、ノアのそう言うところは好きだ。
気球はゆらゆらと動きつつ、普通の気球のような操縦はしてないが、ノアがしっかりと運転してくれた。
向かい先を見ると、それはどこかの小さな田舎というか、惑星には美しく庭、畑、駐輪場、家しか視認することが出来なかった。
どちらかと言うとガラクタ惑星のようだ。
「道くん、夢乃、降りるよ。」
とノアが告げると少しずつ気球のスピードが落ちてきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます