第35話 泣き虫
風がない、空気が美味しい、太陽が穏やかにあたる。
やけに茜色をした空がノアの瞳を真っ赤なものにしていた。
ノアが道が来ると教えてくれたあの瞬間から、いや、あのガラクタの惑星にいた頃からかも知れない。
あんな駅の惑星についてしまうからだ。
私はこのヘンテコな旅の終着点を恐れるように感じたのは。
元いる世界が嫌なのではない。ここがあまりに私の好きなもので溢れていて、離れることが出来そうにない。
楽しいも最高も大好きも詰まっていて、そしてノアも居てくれて。
「夢、どうして泣いているんだ!?」
道が突然大きな声を出し、心底驚いたような、戸惑っているような様子をみて、気付かぬうちに私の目の前に現れた。
私の顔を指先で触り、あの心配そうな眼差しでこちらを見ていた。
どうやら私はこの世界に執着しているらしい。
旅が終わったらどうなるの?
その答えは簡単だ。元ある場所へ帰るのみ。
元ある世界にはヘンテコな世界も、紳士なノアもいない。
目からポロポロと溢れ出すものがきっと道を心配させているのだろう。
一生懸命止めようとするけど、それとは反対に溢れ返ってくる。
白いハンカチが目の前に渡された。
きっとノアが渡してくれたのだろう。上質な触り心地だ。
私は座り顔を隠して、言葉をないままに、心為だけに目からポロポロと流してしまった。
しばらくすると背中に温かいものが上下に交差した。
これは大変迷惑に違いない。
ノアだってただ情報をくれただけなのに。私対して何一つ酷いことは言っていない。
頭ではそうと理解する。
しかし心は悲しくて寂しくて。
本当らこれからだって道が言ったようにどんな美しくヘンテコなものが待っているかドキドキがあったはずだった。
でもどうしようないくらいに今は旅の哀愁が悲しい。
「夢乃、何も答えなくていいからに聞いて欲しい。まず呼吸をゆっくり大きくして。」
私はノアの言葉通りに息を吸う。
落ち着いてきたようだ。
「うん、その調子だ。…夢乃ごめん。いきなり過ぎたようだね。」
ようやっと言葉を発言できるようになってきた。
「ノアは悪くないよ。…そんなことは私だってわかっていたのに。頭が混乱して。」
道の手が優しく背中をさすってくれていたらしい。
「夢乃、もしこの世界からまた元に戻るとしても、その一瞬の別れがあったとしてもこの世界はあり続ける。ここは夢乃の世界なのだから、また来ることはでき、私と夢乃は再開ことが出来るだろう。この世界はそれほど夢乃と深い縁で繋がっているだ。だから何も悲しむ必要はない。必ずまた会えるのだから。それに別れはまだ程遠い。」
ノアは優しく穏やかな声でハキハキと告げる。
しかし、私は知っている。
どんなに深い縁で結ばれていたとしても、再開出来るかどうかは別な問題だということを。
どうでもいいような人とは、カフェで偶然合うようなハプニングや約束を取り付けることは出来る。
しかし私はアイおばあちゃんとの別れから、どんなに仲良くなれたとしても、別れを目の前にしては大したことでない。
それを嫌という程幼い私は理解していた。
私がいなくてもノアがこの世界にいる。
ノアが何度もそうこの世界を私の世界と言ってくれた。
「ノア、ありがとう。」
「ああ。よし夢乃、約束しよう。君はあの惑星についたとしても急に離れたりはしない。別れの挨拶を終えるまでは傍にいよう。そして君を絶対に後悔させないと。」
「うん!」
ノアは優しいなと痛感する。
「道もありがとう。ずっと背中をさすってくれて。ごめんね、変なところを見せてしまって。」
「大丈夫だ。それに俺は結構夢のへんなところが結構好きだ。」
「なにそれ。」
道のおかしな言葉に笑えてくる。
泣いたことで少し心がスッキリする。ノアは私が別れの挨拶を告げるまではそばに居てくれる。
不安とりあえず保留することにしよう。
するて杖をカンカンと2つ鳴らした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます