第34話 別れの予感

コチコチ。


ノアはなにやらドアに細工をしていた。私が寝床から立ち、身なりを多少整える。


「よし!これで大丈夫であろう。準備は出来たかね?」


ノアのその言葉に私と道は全く反応出来ずにいた。

私が鏡を見ている間に、部屋は先程より広くなり、北欧の部屋のような内装に変わってしまっていた。


明かりも寝転がっていたベッドすらも今は見当たらない。2階建てであり、天井は何処まで続いている。


「これは…。」


いや、もう聞くのがあほらしくなってしまう。これはノアの基準に合わせ、冷静に振る舞うとしよう。


「道くん?夢乃?大丈夫かい、疲れているのなら少々まだ時間はあるが。」

「いや、おかしいだろう。」

「ノア!私は外に出てみたい。」

「では開けるとしよう。」


好奇心ほど厄介かつ決心を鈍らせるものはない。


ノアがドアノブに手をかけ、前へ進んだ。

私たちは大きな街の細く小さな路地からノアの部屋に入ったはずだ。

しかし、目に見えるのは、庭があり、小さなブランコが置いてあった。

ベランダにはお茶が楽しめる机と日除け、椅子が綺麗に飾られていた。


なんてヘンテコな出来事であろう。


「夢乃、あの惑星を見てごらん。」


ノアは落ち着いた声で伝える。

こちらに近づいて。ノアは何時だって距離が近い。


ノアはゴクリと喉を鳴らし、そしてこちらを向いている。

道はノアの指差す方へ目線を動かす。


私はノアから視線を外すことはできない。

これはアニメ的な言い方でいう”嫌な予感”というやつであろう。


ノアはずっとこのように視線が交わっているとき、瞳をそらさないときは真剣なことを言う。


確認する時計、道から来てからは何やら先走る行動を取る。

ノアはあまり教えない。

そのおかげで重要な事が分かるし、そして嘘をつかない。

日が昇り日が沈む、出発と共に帰宅がある。

始まりのウキウキは愛しているが、それ以上に嫌なことは終わりの哀愁だ。


ノアはここに来てからやけにその話を避けていた。


ノアは言葉の間が長い。


私はドクンドクンと高鳴る音が耳元から聞こえる。

冷汗が流れる感覚が全身を襲う。

「おい、どうしたんだよ。」

とノアに問いかける道の声も異様に大きく感じる。


「夢乃、あそこは最終目的地だ。旅の終着所だよ。」


ノアの口からその言葉が漏れると、私はやはり大きな絶望をしてしまった。

この旅は終わるものだと感じていたが、言葉が猛威を奮った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る